2018年9月27日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第138山】農鳥(のうとり)岳3,026m(山梨県・静岡県)「不遇の3,000m峰」

ニッポンでは3000m級の高峰は貴重な存在で、主だったところで14座。その大半は栄光の日本百名山に選定されているが、唯一の例外が農鳥岳である。富士山以外ではニッポンの最高度地帯である白根三山の一角を占めるが、他の2山・北岳と間ノ岳が共に百名山であり、3山該当では密度が高過ぎるために選定から漏れたのかも。その意味では不遇な山である。

「農」の字の付く山はありそうで少ないが、山に残る鳥の雪型を農事始めの目安にしたことからのネーミングだろう。ともあれ百名山に漏れたことで、この山は静けさを約束されることとなった。何しろ登りにくいのである。下界からまともに登ろうとすると、稜線に出るまでの標高差が実に2200m。これは日本アルプスでも3本の指に入る。加えて、中途まで沢沿いの路なので、危なっかしい梯子橋や渡渉が連続。一般道としての難易度は高い方だ。ここを登り降りするなんてとんでもない、という訳で大概の人は白根三山縦走の途上で通過することになる。だがこれとて、きつめの2泊3日が必要でワンランク上のイメージ。登山的にも不遇なのである。

もうひとつこの山の事情を複雑にしているのが、農鳥岳の隣に、より高い西農鳥岳が鎮座していること。麓から見て奥に位置しているのでサブに甘んじたのだろうが、主峰を差し置いてすぐお隣により高い山があると言うのも、この山の不遇さに輪を掛けているかのようだ。しかし、眺めの良さでは西農鳥岳を上回る。南アルプス一円の眺めは同様だが、東側の富士山となると遮るものがなく、広大な大地中央に鎮座する姿を堂々眺め渡せる。前衛の山より遥かに高い故だが、富士展望のすっきり度は他の追随を許さないはず。

白根三山縦走なら、農鳥小屋に前泊してご来光を見るのがおすすめ。その農鳥小屋だが、昨今のこぎれいな山小屋とは真逆で、昭和のディープさが存分に味わえる。小屋番の名物親爺さんも人柄が実にユニーク、天然記念物的存在だ。ディープな小屋から不遇な山へ。農鳥岳の山旅は、往年の山歩きを想い出させてくれる点で、まことに貴重な存在と言えるだろう。

◆おすすめコース
広河原-白根御池(泊)-北岳-間ノ岳-農鳥小屋(泊)-農鳥岳-大門沢-奈良田(19時間:中級向け)※行程を少しずらして、北岳肩ノ小屋と大門沢小屋に泊まるパターンもいい。

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農鳥小屋から、農鳥岳(左)と西農鳥岳(右)(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図41「北岳・甲斐駒」

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