2018年10月5日(金曜日)[ トピックス ]

「理想と言われても自校方式の中学校給食が全国どこでもあったらいいね」給食シンポで吉原さん

策定中の中期4カ年計画の素案に対する2千件を超すパブリックコメントで、中学校給食に関する意見は15%以上を占め、その9割が給食の実施を求めています。一方、横浜市は、喫食率の低すぎる「ハマ弁昼食」の当日注文の試行を導入し、連日、食べられずに廃棄される弁当を生んでいます。給食の実現をめざす市民が開いたシンポジウムを取材しました。

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「血の通った給食を用意するには、自校方式が一番いい。センター給食は、一部に血の通ったものもありますが通いにくく、デリバリー弁当には血が通っていない。“ハマ弁”というとサウンドはかっこいい。けれど、その裏に何があるのか一考しなければいけないと思うのです」

9月15日、鶴見公会堂で「どうしたら横浜でも中学校給食を始められる?みんなと考えるシンポジウム」が開かれました。

シンポジストの一人、料理研究家の吉原ひろこさんは冒頭のように言うと、いくつかの事例を紹介しました。現在まで、およそ400校の給食を食べ歩いたという吉原さん。

「2001年頃に、給食に新しい風を吹かせるレシピのオファーを受けてから『学校は何を必要としているのか。どういう風に考えていけばいいのか』が課題になりました。旅費はすべて自費。スポンサーは喉から手が出るほど欲しい。けれど、スポンサーの言いなりになるような気がして、断っています」

この日、吉原さんが紹介したのはいずれも、その活動で見聞きしたいくつかです。
たとえば、近畿圏にある「荒れている」「難しい」とされる中学校の話です。茶髪が目立つクラスにも給食委員がいます。遅刻しても給食の時間には教室に揃うそうです。
「子どもたちは、給食に助けられている」と吉原さんはキッパリ。

その中学校では、「私にできることは、給食もつくるけど、いつもいつも子どもと一緒にいることよ」と誇らしく働く調理員と、就職活動前に髪を黒く染め戻して「ワカメとヒジキ食べたぜ」なんて冗談を言う生徒の会話が弾みます。

教育委員会のアンケート、子どもたちの回答は自校方式に軍配

もう一人のシンポジストは、昨年12月から市内中学校すべてで完全給食が始まった川崎市で、その実現のために市民運動を続けてきた市古博一さん。川崎市の中学校は、1万5千食、1万食、7千食の用意が可能な3つの給食センター方式が中心ですが、運動を反映して4校では自校方式が採られています。教育委員会のアンケートへの子どもたちの回答では、「おいしい」の評価で大きな差が出ていることを紹介しました。(自校方式では、「おいしい」が61・2%、「どちらかといえばおいしい」が32・6%、センター方式では、それぞれ35・8%と47・5%。「おいしい」の回答をみれば、差は歴然です)

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上のグラフをクリックすると大きく表示します。

給食センターはランニングコストが高い「食の工場」?

給食をめぐる問いは、「どのような社会を構想し、構成しようとするのか」に帰結するのかもしれません。

自校方式の給食が実施できないことの理由に、しばしば自治体当局は、財政状況を挙げます。ところが、センター給食の運送や保存と配膳のための設備と人件費などのランニングコストを精査し、反論を立てることはさほど難しくなく、それを試みる市民運動もあるでしょう。事実、横浜市役所は喫食率の上がらない“ハマ弁”に固執して、多額の公費を費やし続けています。

しかし「カネ勘定だけではない」と吉原さんは言います。「素晴らしい施設と機械が揃っていても、そこに働く人の動線まで細かく定められている給食センターは、『食の工場』のようではありませんか?」

午前は製造だけを、午後には皿洗いだけをする労働者が、それぞれパートタイムで派遣され、「おいしいかどうかって?私たちは食べていませんからわかりません」としか答えられないこと。満腹になった子どもたちの笑顔を見ることも、「また明日も情熱をもって作ろう」と感じることもできない労働。そこで造られる「デリバリー弁当」。
そして「デリバリー弁当」を食べて育った子どもがまた、色のない職場で、まるで部品か機械の一部のような退屈な労働を強いられる社会が再生産されることを望んで、私たちは中学校給食を求めているわけではないはずです。

食べることは血の通った会話、感情勘定も忘れずに

「数字は大事です。ランニングコストの精査は必要。けれど(カネ勘定だけでなく)『感情勘定』も忘れないでほしい」と語った吉原さんは、「食べることはただお腹を満たすことではなく、血の通った会話です。理想と言われても、自校方式の要求を貫くこと。理想のないところでは、付け焼刃しか生まれませんから」と運動に携わる市民を励ましました。

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