2018年12月7日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第143山】檜洞丸 1601m(神奈川県)「小屋泊まりで自然観察を」

丹沢の著名峰で一番奥まった山と言えば、檜洞丸が挙げられよう。山麓に人家はなく、いくつもの峰々のそのまた向こうに鎮座する。戦前から戦後にかけて表丹沢が登山者で賑わうようになっても、ルートもなく静寂を保ち続け、怪峰・秘峰の名をほしいままにしていた。

が、1955年の神奈川国体で山岳ルートとして縦走路が開かれてからは状況が一変する。西丹沢の山奥までバス道が延びたこともあり、かつての秘峰は、日帰りで登り応えのある山として人気を博しているのである。なお、奇妙にも山名が「丸」の字で終わっているが、これは形ではなく「山」そのものの意味だ。朝鮮語に由来があり、丹沢では他に畦ヶ丸などにその名が見られる。

山頂一帯は元来鬱蒼としたブナ原生林に覆われ、林間にはツツジ、それも町中の公園などからすると想像を絶するような巨木が点在。満開時には白や赤紫の、ねぶた祭の山車のような華やかさで我々の目を驚かせてくれる。ところがここ三十年程か、異変が起きている。ブナの立ち枯れが進み、山頂が明るくなってしまったのである。直接には酸性雨が原因とされ、京浜方面からの煤煙ガスがダイレクトに当たる南側斜面ほど酷い状態となるに至った。

ただ長い目で見ると、江戸時代の寒冷期に丹沢に成立したブナ林が、明治期以降の寒冷解消に伴い生育に不向きになっていたこと、公害対策の進展でかつてよりは好条件になっているなど、複雑な要因が絡み合う。また、増え過ぎた鹿の食害で植生も変わってしまったと言う説が主流な一方で、むしろ稜線の生息数は減っているなど、自然とは単純でないと認識させられる。

そんな転換期の自然をよく理解した上で鑑賞するのなら、山頂一帯でゆっくりするに限る。それには昨今流行りの日帰りでは忙しい。幸い山頂直下には青ヶ岳山荘がある。丹沢主脈上に五軒ある営業小屋の中では、最も小さく最も静かな小屋だ。簡易な造りだが、小屋の隅々まで細やかな気配りが行き届いている。表丹沢の小屋の喧騒に辟易している人には、目から鱗の静かなムードが堪能できるだろう。

◆おすすめコース
箒沢公園橋―石棚山―檜洞丸(青ヶ岳山荘泊)―犬越路―西丹沢自然教室(8時間:中級向け)
※青ヶ岳山荘はSNSまたはネットで予約。平日は小屋番のいない日もあるので注意。

1524-06

堂々とした檜洞丸の一群(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図28「丹沢」

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