2008年11月1日(土曜日)[ 絵本ひらいてみませんか ]

第57回「どんぐりと山ねこ」

ehon-57

どんぐりと山ねこ
作:宮沢 賢治
絵:高畠 純
岩崎書店


 

小学生のころ、学校の図書室で観た映画のひとつが「風の又三郎」でした。もう半世紀も昔のことです。
ドードド ドドード…の挿入歌と、白黒の画面が鮮明に思い出されます。
やはり小学校の高学年のとき、すこし離れた隣り町の小学校で観た「よだかの星」は、私には難解でした。
それをきっかけのように宮沢賢治にはまりました。

幼いころ、毎月購入してもらっていた〈キンダーブック〉に「セロ弾きのゴーシュ」が載っていたことを、先日松居直さん(福音館書店社長)の著書で知りました。従って賢治との出会いはさらに遡るわけですが、記憶がありません。残念!
思い出話はさておき、きょうの一冊は、どんぐりがコロコロ落ちる季節ですから、この本を選びました。

《おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。
かねた一郎さま あしためんどなさいばんしますから おいでんなさい。とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝》

一郎は嬉しくてどんどん山に向かいます。そして奇妙な格好の男(山ねこの馬丁)に会い、この男があの間違いだらけの手紙を書いたことが判ります。一方、山ねこは堂々と威厳があり、言葉遣いも丁寧に一郎に意見を求めます。
それは、ワイワイガヤガヤ集まったどんぐりたちがだれが一番偉いかで揉め、この争いに3日経っても決着がつかないことでした。

保育士のころ、年長組に読み聴かせた時、一番喜んだ場面です。
山ねこが「きょうで3日目だ。いいかげん仲直りをしたらどうだ」すると「だめです、丸いのがえらい」「大きいのだ」「いやいやとがっているのが…」もう何がなんだか、馬丁もムチを鳴らして黙らせる、が繰り返し書かれているからです。子どもたちは繰り返し、が大好きなんです。

一郎の意見は「いちばんばかで、めちゃくちゃで…」が一番えらい、でした。
なるほど、と山ねこがそう申し渡すと、どんぐりはしぃんと固まってしまいました。そして一郎は…。

赤いズボンを穿いたどんぐりたち、手足だけなのにまるで個性があるようです。
賢治の作品は高価な絵本で数多く出版されていますが、私はこの「宮沢賢治のおはなし」シリーズが気軽に手に取れて好きです。

「横浜市従」第1216号(2008年11月1日)より

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