2019年3月20日(水曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第149山】台ヶ岳 1044m(神奈川県)「誰もが見ている秘峰」

箱根の台ヶ岳。山好きの間でも知らない人が大半だろう。箱根の諸山といえば、観光道路を始め、登山道が四通八達して山域全体を隈なく覆い尽くした感がある。が、どこにでも例外は存在する。観光スポットとしてとりわけ名高い大涌谷のほど近くに、不遇の台ヶ岳は鎮座する。その名の如く四囲の山腹は急峻だが、山頂部はなだらかで、典型的な独立火山の様相を呈している。標高もそこそこ、周囲から際立っているので山的重要度の高い筈だが、なぜか登山道がない。

登山目線で特筆すべきは、登山取り付き点から山頂まで、マークの類が何もないということ。通常は正規ルートの無いヤブ山であっても、それなりのマニアはいるものだ。赤テープでマークを付けたり、マニア同士が同ルートを辿るうちに踏み跡やヤブの隙間ができてしまったりする。しかるに台ヶ岳では、そうした山登り難易度を軽減する要素が、潔いくらい皆無なのである。純粋に各チャレンジャーの登山能力だけを頼りに登っていく他ない。箱根はおろか県内でも屈指の存在だ。

とは言え標高差は100m余り、距離も短いので、ルート探しが正しければ山頂まで1時間ほど。上面の平坦部に出るとヤブが切れ、寒冷地仕様のブナと、暖地性のヒメシャラが入り混じって生育、独特のムードを醸し出す。樹林の切れ間からは、正面に大涌谷の噴煙が手に取るようだ。なにより誰もいないのがいい。箱根の1ピークを独占している気分は格別。お茶などしながらじっくりと山頂気分を堪能したい。

ところがこの台ヶ岳、実は誰しもテレビなどで見ている存在でもある。箱根の晩秋の風物詩と言えば、高原一面にそよぐ黄金色のススキの穂だ。テレビや新聞で紹介されるのは仙石原のススキヶ原だが、わけても山の斜面一杯に展開する様が強烈な印象を残す。この山斜面こそ、台ヶ岳の北側斜面なのである。ただ悲しいかな「台ヶ岳のススキ群落」と紹介されることはない。景観の真の立役者は、控えめにひっそりと沈黙を保つ。せめてヤブを突破した登頂者くらいは、その価値をねぎらってあげてもいいだろう。

◆おすすめコース
国有林前バス停-台ヶ岳(往復)(約2時間:上級向け)※地図がしっかり読める人以外は不可。

1534-01

仙石原から初夏の台ヶ岳(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎国土地理院2万5千分の1地形図「関本」

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