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「資本の収奪を代行」 カジノを問う vol.1

 8月22日に林市長は「IRの実現に向けて」(以下、「会見資料」)を発表した。

 2年前の選挙から「白紙」と言い続けていたカジノを含むⅠR(統合型リゾート)誘致の表明は、突如政策転換したかのような印象を与えている。

 この連載では多面的にⅠR誘致を検証して問題点を浮き彫りにしたい。

 今回は会見資料を見てみよう。
 「横浜市の現状と課題」では横浜が宿泊客やインバウンド(訪日外国人観光客)需要を取り込めていない状況が示されている。また、東京都区部、県央、湘南地区等へ転出超過が継続しているとしている。

 しかし、横浜市は観光地と呼べる場所はみなとみらい地区周辺のみで、全市的に見れば観光業に適していない。ⅠRを誘致することで全市的な経済波及効果は期待できない。転出超過についても、周辺自治体にはどこも中学校給食があり本市より小児医療費助成などが充実していることから当然であろう。むしろⅠRを誘致し「カジノの街」となれば更なる転出増加は確実ではないか。

 会見資料は、上場企業数や法人市民税収入、国際会議開催数で東京に水をあけられていることを問題視しているが、そもそも産業構造や都市としての役割が大きく違う首都と比べることに何の意味があろうか。

 市政の少子高齢化に対する無策によって“横浜の将来への強い危機感”と賭博施設の誘致を“決意”し、そこからの収入を期待する市長の自作自演は、あまりにも茶番である。

 会見資料は、「観光の振興」「地域経済の振興」「財政の改善への貢献」で「これまでにない経済的社会的効果を想定」している。すなわち、ⅠRを民間が勝手に建設し、自然に観光客が集まり、本市には無条件に莫大な納付金・入場料収入が転がり込んでくる夢の事業と言わんばかりである。

 ところが、過去の報告書によれば、ⅠR事業者は施設にみなとみらい線や高速道路、幹線道路を直結させ、横浜駅や羽田空港から水上交通で結ぶことを進出の前提としている。仮に、これらを実現しようとすれば2千億円を超える税金を注ぎ込まねばならない。単一企業に対する過去最大の誘致助成ではないだろうか。

 マカオやシンガポールに明らかなように、ⅠRの収益の8割はカジノによる。カジノは勝った客と負けた客の間に立つ胴元が利益を収奪するだけで何ら新たな価値を生まない産業である。

 会見資料は「インバウンド」を復唱する一方で、国内観光客割合が66~79%と認めている。

 結局、カジノ資本による住民の富の収奪計画を横浜市が代行しているだけであり、決して許されるものではない。