第58回「木」
木
絵:佐藤 忠良
文:木島 始
福音館書店
山や森、林が明るくなりましたねぇ。木の実はどっさり、落ち葉もたっぷり。深まる秋のなかの散歩は、ほかの季節とは別格(の気がします)。
先日、勤務しているところの自主事業で「植物ウォッチング」を行いました。森林インストラクターから、樹木や草花の地域性を学びながらの散策は好評でした。
巨木の根の張りかた、こぶの説明を聴きながら思い浮かんだのが、きょうのおはなしです。
《おおきな木は なにを かんがえているのかな おおきな木をえにかくと いろいろ はなしをしてくれる たっぷりと はなしをためている木のねっこ》
最初のページは写真。広げたスケッチブックには大きな木の根のデッサンが映っています。描いている横顔は彫刻家の佐藤忠良さん。
ロシア民話「おおきなかぶ」の絵本はみなさんご存じでしょう。登場するおじいさん、おばあさん、まご娘の顔はロシア人の特徴を捉えていて、さすがにチュウリョウさん。
《木のねっこは あさ ひる よる つちのなかからいつも しずかに みずをすいあげている》
どっしりと逞しい根が画面いっぱいに広がっています。吸い上げた水が幹、枝梢、芽それから葉へ流れていく順を追うように話が展開します。
《うでを そらにあげた木は とりがやすみにくるところ うたをうたいにくるところ》
ドキッとするほど人間の姿をしています。
最後は仕掛けが待っています。
《さぁこっちにおいで 木のぼりをしにおいで》
よしっ登ってみよう、と抱きつくその木の高さ、太さが実感できる場面です。
チュウリョウさんは今年96歳。最近インタビュー番組で、シベリア抑留のこと、いまの日本が壊れかけていること、を語っておいでで、毎日散歩を欠かさない元気の源は、この気骨が支えているからかしらと思いました。また絵本を作っていただきたいです。
「木」はその散歩で15年間書きためたデッサンをまとめた一冊です。
文章は、詩人の木島さん。絵本の翻訳も多く、ここでも「ピーターのいす」をご紹介しました。「はなをくんくん」なども優しい詩で綴られています。
「横浜市従」第1217号(2008年11月15日)より





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