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シリーズ検証IR(1)「依存症対策に厳格な規制ない日本」


 IR型カジノは世界的に斜陽産業となっている。
 カジノ都市として有名なアトランティックシティでは経営が悪化し、税金を投入したにも関わらず倒産が相次ぎ、ラスベガスでは脱カジノに舵が切られた。マカオでは2013年にピークを記録したが、その後売り上げを回復できていない。

 そんな中、林市政はIR誘致を掲げ、昨年12月から「住民説明会」を開催し、IR特集の「広報よこはま」特別版を配布した。説明会資料と広報よこはまに共通する説明は、シンガポールをIR誘致の「成功事例」として強調していることである。横浜市でシンガポールの「成功事例」を踏襲することは可能であろうか。

 今回は、市民の抱く大きな不安の一つである依存症対策を見てみよう。
 シンガポールではカジノ事業者の運営を管理するカジノ規制庁とは別に、高い独立性を持った国家賭博依存症評議会を設置し、IR事業者の損得を考慮することなく有効な依存症対策をおこなうことを可能としている。

 また、シンガポールでは当初からカジノを外国人旅行客向けの施設として位置づけ、居住者からは入場料約8千円を徴収するとともに、自己排除と家族排除の他に第3者排除を設けて、生活保護受給者や自己破産者など経済的に問題を抱えている場合は入場が自動的に禁止される。その結果、政府の依存症対策の強化でIR開業の2010年と2018年を比べると居住者のカジノ入場数は50%減少したという。

 一方、日本の場合はカジノ事業者の運営を管理するカジノ管理委員会の一つの部署の仕事として依存症対策がおこなわれるだけである。しかも、カジノ管理委員会はIR推進事業者からの出向職員を受け入れ、カジノ推進機関としての様相を強めている。

 まして、横浜市の資料によれば、市が誘致するIRは、利用者の66~79%を日本居住者と見込む。

 国内の依存症率を改善すればするほどカジノ事業者の利益を著しく損なう。IR推進事業者から職員が出向するカジノ管理委員会に徹底した依存症対策など不可能ではないだろうか。