2009年1月1日(木曜日)[ 絵本ひらいてみませんか ]

最終回「桃源郷ものがたり」

ehon-61

桃源郷ものがたり
文:松居 直
絵: 皋


 

モノクロで、だいぶ昔の外国映画です。タイトルは「シャングリラ」だったかしら。
山の奥へ奥へと探検して、夢のような土地を見つける話でした。詳しい筋書きは忘れましたが、サスペンス仕立てでハラハラしながら観た記憶があります。

きょうの絵本を読んだ時、真っ先にこの映画を思い出しました。シャングリラとは、桃源郷とか理想郷のこと。桃源郷は本当に存在していたのか、はたまた夢だったのか…。

中国、晋の時代。国は乱れ、戦争や飢饉があって皆苦しい暮らしをしていた、で話がはじまります。その前に扉に、焼き討ちや強奪、連行されたり逃避する人々が描かれています。線画で彩色もないので見過ごしがちですが、物語の導入となる大切な絵です。

よくよく見るとその群衆の中に主人公一家らしき姿もあります。
貧しい漁師がある日、思い立って沢山の魚を手に入れようと、川上へ船を漕ぎ出します。ずんずん上って、気付くと辺り一面満開の桃の林。よい香りに導かれ更に奥へ。洞くつを見つけ、くぐって出てみると…。

人々が笑顔で働き、老人はゆったりと、子どもたちは快活に遊ぶ豊かで穏やかな村。そこに住むわけはやはり戦争(遡って泰の時代)から逃れ、外界とは行き来を断って暮らしてきたとのこと。

漁師から、次々と国が変わったことなどを溜息をついて聴く村びと。連日もてなされて過ごし、帰ろうとすると「ここでのことは口外しないで」と約束させられます。ところが…。

漁師の付けた目印は、そっと後をつけた村人に外され(信用されていなかったんですねぇ)、噂を聞きつけた殿様も、そののちの人たちも平和で豊かな桃源郷を、誰ひとり見つけることができなかった、という中国古代のお話です。

大きな絵本で、隅々まで丁寧に描かれていて、食卓に並んだ料理、生活の道具、家屋の建て方などとても興味深く読めます。

この欄を3年近く担当してきましたが、今回で終わります。みなさんからの「楽しみにしています」の声に後押しされ、続けることができました。ありがとうございました。

どうぞこれを契機に絵本に親しんでいただけますように。

「横浜市従」第1220号(2009年1月1日・15日)より

Copyright (C) 2003 Yokohama City Labor Union. All rights reserved.