2009年5月15日(金曜日)[ もし家族が認知症になったら ]

第4回「認知症を理解するための8大法則・1原則-その1」

「認知症の人と家族の会神奈川県支部」の杉山孝博代表世話人は、川崎クリニックの院長で、多くの認知症患者を診てきました。認知症には共通する法則があることを見つけ、それを「認知症を理解するための8大法則・1原則」と名づけました。今回からその法則についてお話します。

認知症の中核症状が「記憶障害」である事は前に書きました。私達も日常的に人の名前や物の置き場所を忘れる事が良くあります。認知症の記憶障害とどう違うのでしょう。

まず1つは、〈記銘力の低下〉です。新しいことを覚えたり思い出したりする力が非常に落ちてしまいます。今、自分が言ったことや見たこと、聞いたことを、直後に忘れてしまうのです。だから、何回も同じことを聞きます。

2つ目は、〈全体記憶の障害〉です。大きな出来事すら全て忘れてしまうのです。私達も何日か前に何を食べたか忘れてしまいますが、食べた事は覚えています。認知症の方は、今、食べた事を忘れて「まだ食べていない。俺に食べさせないつもりか」とか「うちの嫁はもう3日も食べさせてくれない」と近所に言い回ったりします。何回もぺろりと食べてしまうので、家族は心配します。でも、この時期の過食は大丈夫なのです。そのことがわかったら、初めから少量にして、「食べたい」と言ったら、「はいはい、今、用意しますから」と言えばいいわけです。食べられている間は元気な証拠でもあります。

3つめは、〈記憶の逆行性喪失〉です。現在から過去にさかのぼって記憶を失っていきます。5年分、10年分、20年分とごっそりと忘れて、最後に残った記憶がその人の現在の世界になります。夕方になると、急にそわそわして、荷物をまとめて家族に向かって「お世話になりました。家に帰ります」と言うことがあります。夕方が多いので「夕暮れ症候群」といわれています。「何処に帰るの」と問うと、決まって「実家に」と答えます。実家に住んでいた時代に戻っているのです。ですから、今いる家はよその家です。早く帰って、幼い子どもの世話をしなければと思って焦っているのでしょう。説得しても、隙を見て出て行ってしまうこともあります。家族の顔が分らなくなる事もあります。若い頃に戻っているので、夫が変なおじいさんに見えたりしてしまうのです。

書籍

「認知症の理解と援助」
出版社クリエイツかもがわ
杉山孝博 著
価格 2310円


「横浜市従」第1227号(2009年5月15日)より

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