第5回「症状の出現強度に関する法則」
今回お話しするのは「症状の出現強度に関する法則」です。
相手で変わる症状
家族の会では週に2回、電話相談を行っています。介護に疲れ悩んでいるお嫁さんからよくこんな相談があります。「一生懸命にお世話をしてあげているのに『財布がない。盗んだのはお前だろう』とか『ご飯も食べさせてくれない。殺す気か!』とかひどい言い方をされます。たまに来る義姉には、笑顔で話しているのに、私には、嫌がらせとしか思えない態度です。大変な思いで介護をしているのに、『お前は何もしてくれない』と言います。悔しいやら情けないやら…」と電話の向こう口で泣いているのが感じられます。
夫に話しても、「そんな事を言う筈はない。お前が大げさに騒ぐからじゃないのか。さっきも『お帰り!お疲れさま』とまともだった」と相手にされません。姑の介護で日夜奮闘しているお嫁さんにしてみれば、やりきれない思いになるのも当然です。辛い思いを誰かに聞いてほしいと電話をしてきたのでしょうか?
久しぶりに遊びに来た実娘や医師に対しては、普段の様子からは想像もできないほどしっかりとした対応をします。このように、一番身近な人に最もひどい症状が出て、よその人にはしっかりとした対応をするというのは、認知症のほとんどすべての人が示す特徴です。相手によって、症状の出方に強弱があるので、第2の法則をこの様に命名したそうです。
信頼しているから
では、何故、認知症の人はこうした「いじわる」とも取れる行動をとるのでしょうか?杉山先生は次のように解説してくれました。幼児は、母親には甘えたりわがままを言ったりして困らせるが、父親やよその人の前ではしっかりとした良い子でいる場合が多い。母親にはどんなふるまいをしても、自分を見捨てたり、言うことを聞いてくれないことはないと、絶対的な信頼を置いているからだと言います。
それと同じように、一番身近で親身にお世話をやいてくれるお嫁さんには、いくら何をしても大丈夫だと思っているのでしょう。「あなたに辛く当たるのは、あなたを誰よりも信頼している証拠ですよ」とお話しすると、電話を通してホッ!とした息づかいが聞こえてきます。
「認知症に向き合う本-治療・予防・介護のアドバイス」宮澤由美著
新日本出版社 定価:1,500円(税別)
「横浜市従」第1229号(2009年6月15日付)より





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