2008年2月1日(金曜日)[ 絵本ひらいてみませんか ]

第40回「セレスティーヌのおいたち」

セレスティーヌのおいたちセレスティーヌのおいたち
作:ガブリエル・バンサン
訳:もり ひさし
BL出版

 新たな年を迎えて、今年こそ痛ましい事件が起きませんように、と願いました。
 でも、毎日まいにち目を覆いたくなるニュースが流れます。中でも、家族のあいだで生じる事件は、親子の繋がりの希薄さを物語って悲惨です。
 ちょっと立ち止まって、考えたり反省したりするゆとりが、失われていく時代なのでしょうか…。
 きょうは、何をおいても心が暖かくなる絵本を紹介したくなりました。

 いつも変わったことを思いつくセレスティーヌと、振り回されながらいつしか一生懸命になるアーネストのお話が、20冊余りのシリーズになっている「くまのアーネストおじさん」のうちの1冊です。
 《このこが ききたいことは ぼくが ずっとまえから かくごしてきたことなんだ》 来るべき日が来た、と感じるアーネスト。
 《わたしが しりたいのは どんなふうに うまれてきたかってこと》
 言いかけては、ためらっていたけれど勇気をふるって訊くセレスティーヌ。
 傷つけないように遠回しに答えますが、セレスティーヌは質問責めにします。

 そして明らかになったのは-
 掃除夫のアーネストは、広場のゴミバケツの中に捨てられていた生まれたばかりのねずみを見つけます。
 雨の日だったことが一層哀しみを誘うシーンです。

 その日からアーネストの献身的な育児が始まります。
 目があいた日。哺乳ビンでミルクを飲んでくれた日。それを書いたノートがどこかにある筈。
 《あった!ぼくがセレスティーヌのことをかいたノートだ》
 《これ みんな わたしのこと?》
 見つかった広場に連れて行ってもらったセレスティーヌは、そこで
 《あなたが わたしをみつけてくれて よかった》
で、この長いシリーズの幕が下ります。

 ゴミバケツに入れたのはパパとママ?の問いに、世話するゆとりがなかったのかも…。そしてぼくには、そのゆとりがあった、の答えにメッセージが込められている気がします。
 バンサンの絵本は、しぐさや目の表情もデッサンが的確で、淡い色彩も美しい。2000年に亡くなってしまったことが残念です。

「横浜市従」第1199号(2008年2月1日)より

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