第42回「生物の消えた島」
文・田川 日出夫
絵・松岡 達英
福音館書店
先日、近くの工業地帯を自転車で走っていたら、建物の脇にポチッと小さな黄色い点が目に入りました。えっ、もしかしたらとUターン。やっぱり。コンクリートのひびに咲いた一輪、この春はじめてのタンポポでした。風に乗った種がこんな場所にも根付いたのでしょうね。
けなげに頑張る命を伝えたくて選んだ、久し振りの科学絵本です。
インドネシアのたくさんの島の中でも、ほんとに小さなちいさなクラカタウ島が舞台です。
ここは火山島です。100年以上も昔のこと、山から煙が立ちのぼり、その3か月後に、上空5万メートルまで火山灰が吹き飛び、津波の高さは40メートルの大爆発が起きます。灰は世界中に飛んでいったとのことですから、噴火の大きさがおわかりでしょう? そして島の大半を失いました。
1か月後の調査で、何ひとつ生物が見あたらない「死の世界」だと判りました。
3年後に、わずかにコケが生え、10年経ち、海岸線にそって周りの島から流れ着いた種子が芽を出します。植物たちはやがて落ち葉になって、火山灰と混じってバクテリアを生じ、土になります。
ここで土の成り立ちを、子どもたちは学ぶことになりますね。黒い土を見ると、「美味しそう」と思ってしまいます。畑がほしいけれど、今のところプランター栽培で我慢、です。
栄養分を含んだ土は、植物を生み、育て、実が成って、鳥が来てついばみ、種を落とし…。
流木に乗って小動物も辿りつき「死の世界」が、豊かな島に生まれ変わります。
絵は松岡さん。森や海の生きもの、植物や動物、あらゆる自然物の図鑑は、ご存じの方も多いでしょう。
椎名誠著「アメンボ号の冒険」の挿絵も描いていて、こちらもお薦めです。子どもの世界に浸れること受け合いです。
丁寧な細密画ですが、遊びもあって楽しいのです。図鑑が好きになるでしょう。
見開きの左には著者の田川さん(似顔絵)の講義の様子が進行役になっています。
最後のページは、熱帯の動植物があふれています。
添えられた文章は「クラカタウ諸島は、実験室ではできない、長い時間をかけて起こる生物の世界の変化を、私たちに教えてくれているのです」
「横浜市従」第1201号(2008年3月1日)より




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