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ブレイクタイム―野毛山Zooといい話

【第39回】 やっと父親になったのに(フンボルトペンギン)

 野毛山に1羽だけ、体の小さなペンギンが住んでいる。トミ君だ。彼の両親は、毎年雛を誕生させているが、まだ一度も子育てに成功したことがないので、トミ君は卵から孵化すると同時に職員の手で育てられたのだ。



フンボルトペンギン

ペンギン目ペンギン科
《分布》 チリからペルーにかけての海岸及び島
《体長》 50cm
《体重》 3.5〜4kg
《食性》 魚

 ところが体が極端に小さい。体重も普通の雛よりかなり少ない。未熟児である。果たして無事に育つか、飼育職員も自信が持てないほどだ。食欲もない。親鳥が子を育てるときには、一度胃の中で消化したものを、口移しで雛に与えるが、職員が育てるときには、魚をミンチ状態にすりつで送り込んでいる。しかし、食欲のないトミ君は、なかなか口を開いてくれない。いやがるトミ君の嘴を無理にこじ開け食事を与えるが、体が小さいために、1回に食べる量も少ない。トミ君用に回数の多い、特別な食事時間が設定された。日中ばかりでなく朝の7時から夜中の10時過まで、約2時間おきに7回の食事だ。担当職員はトミ君だけの担当ではない。

 他にも多くの担当動物を抱え、仲間の職員が休みの日には、その担当動物まで世話をしているのだ。更に食欲のないトミ君は、1回の食事に他の雛よりも時間がかかるので、1日7回は大変な手間である。


 それだけ時間をかけても、他の元気な仲間たちから見ると、体重の伸びも少なく、依然として小さい。羽もボロボロで精彩がない。いつも部屋の奥でうずくまっている。


 そんなトミ君に孵化後53日目、ペンギンたちの大敵カンジダ症が襲いかかったようだ。カンジダ症とは、空中のカビが喉の奥にはびこり、ついには呼吸困難で死亡してしまう、ペンギンにとって最も恐ろしい病気なのだ。もともと体力のないトミ君、呼吸もゼーゼーして見るからに苦しそうだ。立ち上がる元気もなく、荒い呼吸をしながら目を閉じている。獣医職員が、わずか10センチ足らずの息もたえだえの小さな雛に必死で治療に当たり、やっと何とか一命を取り留める事ができたものの、その後も喉に食事を詰まらせたり下痢をしたりと、生きるか死ぬかの繰り返しであった。


 苦闘3カ月、職員の手を患わせたトミ君、小さいながらも何とか成長して、同時期に孵化した同級生と一緒に、親たちの生活しているプールに合流することができたのである。


 今では、マキさんという気丈な伴侶を得て、2羽の間には毎年卵が誕生。誰に教わったのか、一所懸命に卵を暖めている。ところが体が小さいせいか、一所懸命に抱いても、お腹から卵がこぼれてしまうのだ。時には顔の前まで転がっているが、じっと腹ばいになり卵を温めているつもりである。これでは、卵は一向に孵らないので、無精卵ばかり暖めている隣の夫婦に職員がそっと卵を預け、あれ程ひ弱だったトミ君も晴れて父親になったのだ。


 トミ君二世、お父さんと違って、スクスクと順調に成長したのだが、隣の夫婦が育てたので自分の子とは知らず、よくいがみ合っているトミ君である。

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