卸売市場の法改正 私たちの食卓どう変わる?

横浜市には本場と食肉市場の2つの中央卸売市場があります。今年の国会で、その運営や取引ルールの拠り所となっている「卸売市場法」の改正案が可決されました。

卸売市場に係わる法律の成り立ちは、大正時代に遡ります。当時、都市人口が膨張する中、貧困の増加などの社会不安に加え、生鮮食品の高騰による、流通への不信感が高まっていました。そこで公設の卸売市場を整備し、公平・公正・公開・中立な〝セリ取引〟を根幹とする法律が制定されたのです。

ところが戦後になって、その理念は揺らいで行きます。大手出荷者による卸売業者の株式取得(系列化)が進む一方、1971年の現行法への移行時には、スーパーの意向などに沿って、貯蔵できる規格品に限り、相対取引(一対一で行なう非公開な値決め)が認められます。しかし実際は規格品に限らず、セリの前に荷を先取りする違反行為が横行し、1999年、それを容認する形で相対取引が全面的に解禁されたのです。

2015年の全国中央卸売市場でのセリ取引の割合をみると、水産物は17%、青果物では僅か10%。卸売市場の取引は、効率優先へ舵を切ったと言えます。さらに今回の改正では、民間の施設も中央卸売市場に認定するほか、卸売業者と仲卸業者の機能区分を緩和し、各市場が独自に取引ルールを定めて公表するといった、卸売市場を丸ごと市場原理の中に投げ込み、市場相互の競争を煽るような方針が示されました。

こうした当初の理念を翻すような改正に対し、「価格形成機能の低下」「零細業者の切り捨て」など、社会インフラとしての機能や経済民主性の後退が懸念されています。けれども、「けしからん」と憤るその前に、皆さんは生鮮食品をどこで買っているでしょうか。私たちのライフスタイルの変化が、卸売市場のあり方を変えてきたとも言えるのです。

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セリの様子(横浜市HPより)

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明治の市場(横浜市HPより)