「白紙」一転カジノ誘致へ 林市長の“決断”で横浜は飛躍どころか泥舟だ

 林市長は、「白紙」としつつもカジノ事業者から構想案を募集してきました。先月22日に「IRの実現に向けて」とした記者会見を行い、これまでの「白紙」を一転、山下ふ頭を候補地として、IRの誘致を正式に表明しました。それに対し、市民も、港湾事業者でつくる横浜港運協会も反対の声を上げています。会見翌日の23日には、横浜港運協会会長の藤木幸夫氏が緊急会見を開き、「命を張って反対する」と徹底抗戦の構えを示しました。

 2017年の横浜市長選挙を目前に、それまでIR(カジノを含む統合型リゾート)に前向きだった林市長は突然「白紙」へと態度を転換し、3選を果たしました。昨年のパブリックコメントでは、IRにかんする433件の意見のうち94%が否定的な意見で占められ、今年6月に市内4カ所で行われた市民説明会では、質疑における市民の発言はすべて誘致に反対するものでした。

 記者会見を前に、市民らでつくる「カジノ誘致反対横浜連絡会」が関内駅前で宣伝行動を行いました。横浜市従を代表して政村修委員長が発言しました。パブリックコメントや市民説明会でも分かるように、「カジノはいらない」の民意は明らかであるにもかかわらず、会見の中で市長は誘致を強行する態度を示し、住民投票を行う考えはないと明言しました。

 市長は9月市会に、債務負担行為の設定1億4千万円と補正予算併せて約4憶円の計上と、「IR推進室(仮称)」の新設を提案するとしています(8月22日現在)。

名ばかり「規制」。24時間カジノ漬け

 会見の中で林市長が「世界最高水準のカジノ規制」と力説した「IR実施法」。「依存症の方を増やさない」ために設けられているとされる「入場規制」に注目してみます。

 〝週3回、4週で10回まで〟としていますが、カジノの営業は24時間です。「1回」は24時間が上限のため、昼から入場し、翌昼まで徹夜で賭博にふけり、また翌日の昼から翌昼まで徹夜。その翌日も…と続いていきます。この計算では、月曜日から土曜日まで、カジノに入り浸ることが可能です。これを3週間続けたとしても、4週間目にはまだ24時間の賭博ができる計算になります。そしてその翌週にはまた、月曜日から土曜日までカジノ漬けの日々が始まるわけです。

 入場料6千円という「規制」もどれほど効果があるのでしょうか。ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンの1デイパスポートは7400円、富士急ハイランドは5800円、八景島シーパラダイスでも5050円です。6千円が「規制」になるならば、誰も遊園地に行かないという論理が成り立つことになります。カジノ利用客には宿泊や飲食代が無料になるなどの特典がついてきます。6千円の入場料がかかっても十分に元が取れると思い込まされる仕掛けです。

 果たしてこの「規制」で、林市長が言うように「依存症の方を増やさない」などという夢物語は叶えられるのでしょうか。

寺銭で財政改善。 依存症対策の経費は「未精査」

 市長はIR誘致によってインバウンド需要を取り込み、財政の改善へ貢献すると言いますが、「検討調査(その4)」の報告書では、カジノ入場者の最大9割が国内からの利用客と想定しています。「税収を上げるために誘致する」というものの、対象は住民です。住民生活を破滅の一途へ導くのは、誰の目から見ても明らかです。

 22日の記者会見で林市長は、市内の依存症患者数について「把握していない」と答弁しました。依存症や治安対策に相当な経費がかかるのではないかという記者からの質問に対しては、「市の大変な負担になっていくとは考えていない。国との問題もある。きちんと精査していく」と答弁しました。現状の依存症患者数も把握できておらず、「精査」もできていないのに誘致を表明する市長。「入場規制」一つとっても穴だらけの「IR実施法」の下で進められるカジノ。そして新たに設置される「推進室」で、市民からの批判の声にさらされながら市長の命令に服して住民の願いと逆行する仕事に従事しなければならない職員が生まれることも事実です。組織の制約の中で、日々葛藤しながら、「住民本位の仕事をしたい」と望む労働者の尊厳を傷つけるものです。

韓国では街が崩壊。 治安悪化で小学校移設

 隣国の韓国では1か所だけ国民が入場できるカジノがあります。そのカジノのある江原(カンウォン)では、犯罪が急増し、自殺率も全国平均の1・8倍になったと報告されています。15万人だった人口は3・8万人にまで減少し、街にはサラ金や質屋、風俗店が立ち並び、カジノ利用者が地域住民とトラブルを起こすなどの治安悪化により小学校が移設に追い込まれました。

 カジノは負ける人がいて成り立つビジネスです。横浜の未来をどう描くのか。次号より、連載でカジノ誘致に迫ります。

「IRの実施に向けて」の記者会見ポイント

  • 林市長としては誘致はすでに決定事項
  • 一昨年の選挙時の「白紙」発言は、「一切やらない」という意味ではない、市民をだましたという認識はない
  • 税収を上げるために誘致するが、依存症や治安対策の経費については検証していない、財政負担になるとは考えていない
  • 住民投票をする考えはない

黒岩県知事「後押ししていく」

 神奈川県の黒岩祐治知事は8月27日の定例記者会見でIRを「県全体の観光の活性化を図るため非常に有効な施策」だと評価し、県として「市町村が判断したら後押ししていく」と説明。市長が「白紙」を一転させたことについては、「市民を裏切ったというのは違う。白紙とは、検討しているというということだと受け止めていた」と擁護し、「実現することを期待している」と支持する考えを示しました。市長が表明直後に市長室で資料を放り投げた映像が報じられたことについては、「みんなの前でやったことではない。それだけ大きな決断をした証」だと述べました。

宣伝行動における政村委員長の発言

 今回の誘致表明の報道を受けて、驚くと同時に大変な疑念を抱かざるを得ない。

 林市長は就任以来「信頼と共感の市政」を標榜してきた。労働組合と立場は異なるが、行政を進め、市民のくらしを支えていくという一致点から見れば、「信頼と共感の市政」というのは大事な視点だとも思ってきた。

 しかし今回のカジノをめぐる対応は、市民の中に不信を広げ、信頼を失っていくものだと言わざるを得ない。職員は行政として方向性を決めれば、仕事としてそれに従うしかない。しかし、本当にそんな仕事をしたいのか、心の中で不満を持っている職員はたくさんいる。その一人ひとりの心の内を、私たち労働組合は代弁をして、しっかりと問題指摘をしていきたいと考えている。