2019年9月19日(木曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第159山】双六池界隈(岐阜県・長野県)約2,540m「深山のターミナル」

 当然ながら、登山道には分岐が付き物である。大概は山中に標識が一本立っているだけのシンプルなものだが、重要ポイントは人の集まる拠点となる。人気の北アルプスともなれば、百名山初め人気スポット近郊の分岐には、山小屋やテント場ができる。そこへ登山者が集まり散じてゆく様は、正に山中のターミナルといえるだろう。

 一方で近隣に格別著名な目標もないのに、ターミナルになる所もある。その代表格が双六池界隈だ。下界から丸々1日行程だが、収容人数を誇る双六小屋が建ち、広大なキャンプ指定地が広がる。槍ヶ岳方面、黒部源流域方面、笠ヶ岳方面、そして登山拠点である新穂高温泉方面と、4方向への拠点を占めている。

 ターミナルの1日は目まぐるしい。お昼前後より各方面からの登山者が現れ始め、やがては続々と下りてくる。小屋前のテーブルは乾杯や昼食の面々で賑わい、キャンプ地ではカラフルなテントが見る見る増えていく。夕飯時ともなれば、食事の支度をするキャンパーや、小屋の夕食を終えて談笑する人、その他入り乱れて百花繚乱、本来静謐であるはずの山奥に賑やかな空間が現出する。やがて夕日に染まる山々を眺める人の群れ。一帯は山の合間に位置するのに展望にも優れる。日没と共に人が去り星空の静寂。そして翌朝、夜明け前から四囲へ向かうヘッドライトの灯が点々と暗闇に連なる。日が昇ると順次周囲へ人が散ってゆき、昼まで束の間の静けさが蘇るのである。

 双六池界隈は縦走上の通過点に過ぎないというのが一般的な認識だが、実は近隣にも名所がある。肝心の双六池は、かつては山上の別天地を思わせる自然境であったが、ターミナル隣接が災いして、さすがに人間臭く俗化してしまった観がある。それなら雲上のプロムナードが広がる双六岳がいい。足元を含めた景観の素晴らしさは北ア全体でも秀逸。さらには槍ヶ岳の極上の展望台である樅沢岳、槍穂高連峰を逆さに映す鏡池。別に百名山にこだわらなくとも、これら名所を巡るだけで充実極まる山旅が堪能できる。「ターミナル」から受けるイメージは手段にしか過ぎないが、十分に目的を足り得る名コースを提供してくれるのである。

◆おすすめコース
 新穂高温泉-双六小屋(泊)-双六岳-新穂高温泉(14時間:中級向け)※双六小屋に連泊するプランもお勧め

双六キャンプ場と双六池 ( 上の画像をクリックすると大きく表示します )

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図38「槍ヶ岳・穂高岳」

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