裏切りの誘致 住民の共同の利益に適うか

 人は労働によって自己を表現し、労働の中に喜びを見いだします。自治体労働者にとって、その喜びの多くは、住民生活に対して直接・間接に責任を負っていることと深く結びついています。

 ところが、現実の地方自治体は、国家権力の下部機構として、財界の意向を汲む政府の下請けとなって住民生活を管理・監視する役割も負わされています。あるいは、職員は上司の職務命令に服従する義務を負っているがゆえ、市長が“決断”した施策が個々の住民の権利と衝突する場面に遭遇しても、推進する立場に立たざるをえないことが、これまでも職員の倫理的ディレンマを生んできました。

 政策が総体としては、住民の共同の利益=「公共の福祉」に適うものであると信じられる限りにおいて、たとい自治体労働者は非難されることがあっても、粘り強く説明し、住民の理解を得る努力を続けられるのでしょう。

 単に給料さえ支払われればどんな仕事でも「仕事は仕事」と割り切って厭わない“モノ言わぬ”使用人ではなく、私は“全体の奉仕者”だと自分に言い聞かせて。

 さて、「IR実現に向けて本格的な検討準備を進める」と表明した市長の記者会見。翌々日には、報道陣の鋭い追及に苛立ったらしい市長が会見後に資料をブン投げたような映像も放送(「報道特集」TBS系)されました。

 突如「白紙」が「実現に向けて」転換したカジノ誘致。

 住民生活に深く根ざした働きをしてきた職員には、会見で説明する市長のように「子育て、医療、福祉、教育など市民の皆様の安全、安心、幸せな生活をしっかりお支えしていくためにはどうしたらいいのか、市民の皆様にとって最も良い方法は何か」という観点で検討を重ねた結果だ、と強弁することは耐え難いはずです。

 自治体労働者と住民の基本的人権を侵害するおそれがある首長の職務命令の遂行を拒否する権利を具現化する実践として、機関紙「横浜市従」は黙らない。