2019年10月15日(火曜日)[ トピックス ]

「ⅠR誘致と横浜経済」 カジノを問う vol.2

 今回と次回はⅠR(カジノを含む統合型リゾート)誘致と横浜経済について考える。

 市長が発表した「IRの実現に向けて」(以下、「会見資料」)には、夢のような経済効果が示されている。しかし、そんなことはあり得るのであろうか。

 ⅠRには、数千室あるホテル、飲食店街、ショッピングモール、大型の劇場や映画などのエンターテイメント施設が含まれる。一度ⅠRに入場すれば一歩も外に出ずに宿泊からエンターテイメントまで体験できる。ⅠR内の施設はカジノの利益を元手に運営されるため、独立採算は度外視した低価格で提供される。カジノ利用者に対しては無料で提供されることもあるためIR周辺の観光産業は必然的に淘汰される。

 会見資料が示した数字の中間値からⅠRへの訪問者3千万人のうち72・5%を日本人とし、ⅠR全体におけるカジノ収益の割合をシンガポールやマカオのⅠRを参考に75%とすれば、関東一円の住民の財布から毎年3235億円が奪われ、税引き後の利益が海外に持ち出される計算だ。それによる消費低迷に起因する倒産や廃業などのマイナスの経済波及効果だけ考えても相当な規模になるであろう。

 付随して失業対策、加えてギャンブル依存症対策や治安の維持などに多額の費用が必要となるのだ。

 カジノの本家本元である米国には、ギャンブル依存症にかかる社会的コストが病的依存症患者一人につき年間100万円を超え、カジノから得られる社会的利益を上回るという研究結果がある。

 建設時の経済波及効果が1兆円を超えたとしても、それは一時的なものでしかない。開業後は収益の中心であるカジノがどれだけ儲けようとも、付加価値は生まれず、単に価値が移転しているだけである。

 ⅠR内の雇用創出を期待したところで、他国のⅠRを参考に予想するとせいぜい1万人程度だ。失われる周辺の雇用と相殺される規模に過ぎない。しかも、大半が熟練を要しない労働とみなされて非正規雇用されがちな職種で、外国人を接客するため、どれだけ日本人が雇用されるだろうか。

 そもそも会見資料の数字は毎年1千万円の調査費用を6年間も計上しておきながら、市独自に試算したものではない。事業者側から提供された計画や予想を並べただけの無責任極まりないものである。

 米アトランティックシティでは経済再生の切り札としてⅠRを誘致した。わずか人口4万人の街に年間3千万人が訪れるようになった。けれども周辺のホテルやレストランは潰れ、世帯平均所得はニュージャージー州平均の4割、貧困率は3割、失業率と犯罪率はトップクラスとなった。

 小さな街ひとつ救えないⅠRが横浜という大都市に恩恵を与えるなどとは妄想に過ぎない。

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