取材を終えて 誘致ありきのIR産業展に45社出展(3)

 IR事業者ほか、様々な企業が出展していた産業展。それぞれの企業が「得意分野」と自認する「世界のエンターテインメント」や「最先端技術」を披露する華やかな広報活動をよくよく見てみると、空間に違和感がありました。明らかに出展企業間の〝棲み分け〟がおこなわれたブースの配置がなされているのです。〝棲み分け〟は事業者によるセミナーでも顕著に表れており、カジノの収益について言及したのはラスベガス・サンズのみでした。メルコリゾーツ等のその他事業者は、“素晴らしいリゾート施設”だと繰り返し、「送客」部分を担うかのようなアピールに終始。依存症について話していたセガサミーはマシーン等のカジノ内に導入される機材を請け負うと推測されます。
 ブースを取材すれば、カジノ(ゲーミング)フロアの監視は富士通が、IR全体をNECが、カメラ等の機器はキャノンが担うだろうことが簡単に想像できました。

 様々な資本がIRへの参入で既に役割分担を始めており、それらの資本が構成する企業複合体が箱モノを作るのではないかという推測が成り立ちます。そして、いくつかの建設会社が出展しているところを見ると、建設にあたる企業にも暗黙の〝棲み分け〟があるのかもしれません。カジノ資本と横浜財界・日本財界にとっては、山下ふ頭へのIR建設は事実上の決定事項であり、産業展はまるでIR建設着工のオープニングセレモニーのようにさえ感じさせました。
 1月31日には、衆・参両院予算委員会での共産党議員による追及で、事業者や誘致自治体を対象にコンサルタント業務をおこなうIR推進事業者から、カジノ管理委員会に職員が出向していることが明らかになりました。いくら「世界最高水準の規制」と言ってみたところで、管理委員会の規制は弱く、むしろカジノ資本やIRに参入する事業者にとって都合のよい制度設計をするのではないかという疑念は拭えません。

 「売春婦」の実在についても、平原副市長は頑なに否定したいようですが、世界のカジノを見れば、カジノと性産業を切り離して論じられないことは明らかです。
 IRは空間そのものが「非日常」を演出し、ひとときの興奮、高揚をもたらすものであることは、取材班も産業展で確認しています。特定の場面だけ切り取れば、「楽しい施設」だと思われる部分もあるでしょう。しかしその裏で多くの労働者が搾取され、公式な「エンターテイメント」でさえ、女性「性」が売り物にされる。IRが消費を囲い込んで地域経済は冷え込み、多くの住民が新たに依存症に陥る。たとえば10年後、それらが横浜で起きる出来事になることを住民は望んでいるでしょうか。