2020年7月20日(月曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第176山】南島 57m(東京都)「楽園にそびえる針の山」

 小笠原諸島というと、小島の連なりが連想されるが、実体は2000m以上深い海底からせり上がった大山脈の頭だけが、島として浮かんでいるものだ。北アルプスが海に沈んで標高2500m以上の部分だけが海面上に見えると思えばいい。

 小笠原の主島である父島の南端すぐそばに小島が散りばめられていて、その中に南島がある。本島とは根本的に地質が異なり、古代のサンゴ礁の名残である石灰岩でできている。その後にカルスト地形(秋吉台などに見られる)が形成され、海水面の上昇に伴い波に洗われるようになった。わが国でも希な沈水カルスト地形として、2008年に天然記念物に指定されている。

 自然保護のため勝手な入島はできない。1日あたりの入島人数は100人まで、東京都自然ガイドが同行するツアーに参加の上、定められたルート以外は立ち入り禁止、滞在は2時間以内となっている。ハイライトは、なんといっても島中央部の扇池に止めをさす。外洋に面した岩壁にトンネル状の穴が開いていて、波が打ち寄せてくると、内部のコーラルビーチに同心円状に海水が広がってゆく。そのスタイルと演出の妙は人工としか思えないほど。神の造形美、なる誉め言葉をよく聞くが、その最たるものといっていい。

 さて南島、山としてはどうだろう。20世紀末に、三角点のあるピークを目指したことがある。急峻なので岩に捕まりながら登っていくが、ラピエという石灰岩が露出していて先端が鋭く刃物のように尖っている。下手に掴もうものなら容易に手を切ってしまう。まるで刃物か針の山。あらためて考えてみると「触って危険な山」というのは随分と珍しい。他には一部の活火山に、触ると熱い山があるくらいだろう。ともあれ危険を冒して(?)辿り着いた三角点からは、四囲にコバルトブルーの海が広がる。ピークに居る達成感は、やはり山そのものであった。

 現在の島内は指定の場所以外は入れず、残念ながら件の三角点ピークを極めることはできない。その代わり扇池付近の山上まで遊歩道が付いていて、怪我の恐れなく安全に登ることが出来るし、扇池を見下ろす絶好のロケーションでもある。楽園を堪能して欲しい。

◆おすすめコース
 父島二見港(船)南島(1~2時間:初級向け)※南島への船便は、大概はホエールウォッチングなどとのセットである。

扇池の絶景(上の写真をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド 小笠原村観光協会のホームページなど

Copyright (C) 2003 Yokohama City Labor Union. All rights reserved.