【第184山】 コロナ禍での登山模様

 コロナ騒動が勃発してから、早や1年近く経つ。むろん、登山の世界への影響も計り知れない。この5月頃は山の人影すら稀であったが、夏以降はさすがに回復しつつあるようだ。しかしその中身は大いに変わってきているのである。

 まず、大人数の登山は好ましくない。呼吸確保のためマスクを外さざるを得ないので、少人数で間隔を空け、休憩中も群れることの無いよう努めたい。が、30人以上が数珠つなぎに歩き、山頂では密になってお喋りに耽る例を見た。いくら外気に覆われた山の上とて、これは拙い。また、山中ではすれ違い時の「こんにちは」の挨拶が、マナーというより条件反射的に出てしまうものだが、コロナ的には宜しくない。といってガン無視すれば相方の気分を害しかねないから、黙礼で済ませられれば。

 山中の宿泊となると、さらなる対策が求められる。すし詰めの山小屋の密度は旅館の比ではない。究極の対策としては、今夏の営業を取りやめてしまった南アルプスや富士山の例がある。が、これでは自分の首を絞めるに等しいから、他の小屋では独自に3密対策を模索している。

 徹底した例をひとつ。定員百名のところ、4分の1の25名に絞る。もちろん完全予約制。寝具は一切提供しないので、宿泊客は寝袋が必携。小屋の入口で検温、もし熱発していればお帰り願いたいところだが、山奥の小屋で宿泊を拒否すればそのまま遭難だから、隔離室でも設けて一晩収容するのだろう。トイレはグループごとに利用ブースが指定され、感染確率を押さえる。また、日帰り登山客の飲食やグッズ販売は山小屋の重要な収入源なのだが、泊り客以外は小屋内への立ち入りはお断り(写真)。勢い食堂はガラガラだが、ついつい仲間内で群れてしまうのは人間の性だ。

苗場山頂の山小屋の案内看板

 泊まりでは、小屋よりもテントが推奨される。が、集団のテント生活は究極の3密だから、団体であっても一人ひとつずつ小型テント持参が望ましい。実はこのスタイルは近年増えてきたのだが、単独テントは使用面積に無駄があり、ためにテント場が満員になってしまいがちで評判が良くなかった。それがコロナのお陰でむしろスタンダード化されそうな勢いなのだ。

 未だ収束が見通せない中、世の中がコロナに合わせるかのように急速な変貌を遂げつつある。山の世界もまた例外ではない。登山の常識がどう変わっていくのか、ポストコロナの成り行きに目が離せない。