核兵器禁止条約 大国の妨害を超えて変わる世界

 核兵器を違法化する国際条約「核兵器禁止条約」が1月22日に効力を発しました。署名は86か国、批准は52か国(1月22日現在)に達しています。唯一の戦争被爆国を自称する日本の政府は、署名・批准しない姿勢を崩していません。

 菅首相は発効同日の参院本会議で、「多くの非核兵器国からも支持を得られていない。当条約に署名する考えはな」いと改めて強調。来年1月までに開催される「締約国会議」へのオブザーバー参加も否定しています。

NPTと違い 特権なし

 核不拡散条約(NPT)の目的は、核兵器の「拡散防止」です。米、露、英、仏、中の5か国のみに核兵器の保有という「特権」を認める一方で、他国には核兵器にかんする一切を禁止する条約です。

 対して、核禁条約の目的は、核兵器の「全廃」で、保有する核兵器すべての廃棄を義務付けています。同条約では核兵器の開発、保有、使用、威嚇の禁止に加え、それらのことをめぐる他国間の「援助」も禁じられます。加えて、締約国は核兵器の使用や実験による被害者支援や環境改善の義務も負うことになります。

 したがって、安全保障政策が米国の「核の傘」に依存したままの日本は批准できないのです。

 現在核兵器を保有する9か国(米、露、英、仏、中、印、基、以、朝)は核禁条約の批准に背を向けたままです。米国に至っては、批准国に批准の取り下げを求める書簡を送っていたこともAP通信の報道(2020年10月21日)により明らかになっています。

 しかし、いくら政府が批准を拒んでも、国際法に反する核兵器の開発や製造などに関与・融資することは、企業の価値を下げるリスクとなります。

 たとえば、オタワ条約(対人地雷全面禁止条約)やオスロ条約(クラスター爆弾禁止条約)が発効されて以降、生産や取引・使用は国際的に問題視され、製造に関わる企業だけでなく、融資する金融機関も非難の対象となりました。

人民の連帯が資本を縛る

 そうして違法な兵器の製造と使用、それへの投資は許されないという国際規範が確立されたのです。事実、オスロ条約発効後、日本の全国銀行協会は「社会的責任に鑑み、クラスター弾の製造を資金使途とする与信は、国の内外を問わず、これを行わない」と表明しています。同じように、核兵器は非人道的であるという倫理に加え、国際法の発効により、国際規範はより確かなものとなって、資本をしばってゆくでしょう。

 超大国と巨大資本の専制を名のない人々が追い詰めていく。ヒバクシャが先頭に立つ運動の歴史は、その紛れもない事実を証明しています。