横浜の保健所 コロナ禍で見えた混乱と脆さ

 新型コロナ感染症の拡大に伴い、「保健所」がテレビや新聞でも大きく取り上げられるようになりました。「保健所」は、国が社会保障として責任を負う公衆衛生の中核機関の一つです。

社会保障部長(保健師)

 横浜市の保健所がどこにあるかご存知でしょうか? 横浜市には保健所が1か所(ただし保健所という看板は掲げていません)。18区役所内にある「福祉保健センター」はその支所です。

 現在の「福祉保健センター」体制になったのは2002年1月、「保健所」と「福祉事務所」を統合して、業務別の体制がスタートしました。その後2007年4月、保健所機能については今回のような大規模な感染症が発生しても迅速で的確な対応ができるよう、指揮命令系統の一元化により健康危機管理機能の強化を図るため1保健所18支所体制となりました。

 ところが、コロナ禍による現場の混乱や悲愴な状況をみると、「想定外」では済まされない体制の問題が浮き彫りになったと言えるでしょう。

 保健師は公衆衛生を中心として担う専門職で、すべての住民を対象とする地域まるごとの健康に関する専門職です。2002年の機構改革以降は支援対象別の配置となり、感染症対応の職場には当時の業務量を勘案し、各区3~5名の保健師が配置されました。今、急激な患者の増加を前にして、所管課だけでは対応が困難となり、各区で他課の保健師が長期に渡って業務を応援しています。一度目の緊急事態宣言の頃は、他課で業務の多くが停止・延期されていましたが、そのことによる母子や高齢者の健康への影響もあり、業務が再開されると、応援する保健師もコロナ対応との両立に頭を悩ませています。

 感染症を含め、日ごろ複数の保健師が複数の健康問題・予防活動に対応する同じ業務にあたっていれば、その時々に優先順位に応じた対応を行ったかもしれません。日ごろ別々の業務を行っているため、全体的な健康課題の優先順位をつけることが難しい状況があります。全体的判断を行うのは誰か? という課題も浮き彫りとなりました。

 保健師だけではありません。医師や栄養士・歯科衛生士、衛生監視員、事務職員など、保健所業務に関わる職員が一緒に対応していますが、自治体職員減らしの流れの中で、十分な人員が確保されていません。医師の配置がないセンターもあります。

 工夫しながら住民に向き合っていますが、職員の健康も守られない厳しい状況では良質な公衆衛生活動は展開できません。

 福祉保健センター体制になったことの検証も十分になされていません。コロナ禍で見えた課題を、大規模な感染症や災害時の対応も含めた健康危機管理体制を構築しなおすために活かし、住民の健康と安全な生活をまもることが求められています。