横浜版フレックスタイム 課題が残るワークスタイル変革

 今年度より、横浜版フレックスタイム制度の利用に上限回数を設けないことになりました。
 この制度には、子どもが就学したことで仕事との両立が阻まれる「小1の壁」や介護を理由とした離職を防ぐための緊急避難的な選択肢として活用できる、一定の有効性があります。
 一方でワークスタイル柔軟化の有する性格に、わたしたちは慎重な姿勢をとるべきだ、と組合は指摘してきました。

 たとえば、「柔軟な働き方」の本格導入が労使協議の俎上に載った2018年12月に組合の発行した「情報」と「働き方改革討議資料」は、公務労働(とりわけ基礎自治体)の役割の本質は、住民との接点が生まれる職場で住民のいのちとくらしと財産を守ることにあり、住民の来訪のない閉庁時間帯の勤務を恒常化することには慎重にならざるを得ない、との考えを明らかにしています。
 討議資料は、勤務時間をずらすことでしか「心身の負担軽減」が期待できないほどの長時間労働が恒常化していると、住民応対が「億劫」で「作業の進行を妨げること」であるかのような認識の逆立ちが職員の中に生まれ、その結果、自治体は住民の姿をとらえられなくなり、役割の大きな後退を強いられかねないとの警告も発しています。
 原則的に考えるなら、基礎自治体が持つ現業機能を低下させずに長時間労働の是正に必要な手立てを講じるとき、年次休暇や、育児と介護に関する休暇と休業の権利行使をためらわなくてよい程度の、業務に見合った増員は避けて通れません。
 こうした問題提起は、現在も有効です。むしろ、コロナ禍によって、住民のいのちとくらしを支えるために職場の脆弱な執行体制を補強していくことの必要性は高まっています。

 あるいは、勤務時間外の対外的業務に対応した際の心身の負担軽減や、勤務長時間化の防止の目的ならば、フレックスに頼らずとも、実際に時間単位の年休取得で対応できるはずです。
 ところが、付与された年間20日の年次休暇を取得できておらず、「捨てている」のが現実です。それどころか「10日以上」を取得した職員でさえ75・9%どまりです(2019年度)。

 働きがいある働きやすいワークスタイルとは何か? 公務労働の価値に照らしながら求めるべき変革は課題を残したままです。

 ところで、今回の改定にあたり、組合から労務課に次のことを確認しています。
 あくまで職員からの申告による利用、不払い残業を防ぐ所属長の労働時間管理、休暇等を取得する職員の妨げになる割り振りの禁止、フレックスタイムを利用しない職員の業務負担増になる割り振りの禁止、休暇等を取得しようとする職員へのフレックスタイム強制の禁止。
 責任職の誤った運用を見たら組合へ連絡を。