育児休業 ジェンダー主流化への共通規則

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 新採用職員が配属される一般職人事異動の日は、「チーム横浜」のメンバーが揃う起点と見られています。とはいうものの、実際は、4月下旬から今月初旬に育児休業者の復職を待って「チーム」の欠員がようやく埋まった係も少なくないでしょう。

 ところで、イギリス福祉国家の先駆者として知られる「ウェッブ夫妻」には、19世紀末の労働運動を分析した著書『産業民主制論』があります。社会学者にして経済学者のシドニー・ウェッブとベアトリス・ウェッブは、労働組合の機能を「競争規制」と表現しました。

 自由な市場経済において「働く」ことは、労働力商品の売買として現れます。市場で労働力商品の個人取引=「競争」を放置すれば、労働力商品の売価たる賃金・労働条件は、低下の一途をたどります。

 「より安く」「より長く」「より過酷に」働く者は働けるだけ働くでしょう。一方で、それができない者は「使い勝手が悪い」労働力として、究極的には職を失うことになるのです。

 わたしたちは、両者を分ける大部分が、からだの性としての男女に属することを「常識」のように知っています。

 遠隔地配転を昇進の要件とすることで、子育て中の女性労働者は「自主的に」低処遇へ向かい、「性別役割分業」の下で育児の多くを担う女性労働者は正社員の継続を断念してきました。

 市場に委ねた場合、この国で女が「男なみ」の給料を受け取ることは、まずありません。

 生涯にわたり女性の昇給カーブが男性のそれを下回らないためには、労働組合が団体交渉を通じて獲得した「共通規則」が不可欠です。公務員はいくぶん「マシ」だったとしても、横浜市役所ほど共通規則に富んだ自治体はおそらくありません。

 たとえば「復職時の給料月額調整」、育児休業により人事考課結果が得られなかった場合の「昇格(昇任)の基準」と「上位昇給における特例」によって、間接的な賃金差別も排されます。 育児時間や部分休業の権利行使を理由に人事考課で不利益な取り扱いを受けない運用も交渉の中で確認されています。

 これらは、形式的に「男なみ」をめざす機会が与えられた「男女共同参画」とは異なります。公平に見えて機会の均等は、家庭と職場というアイデンティティの使い分けに働く母親を疲弊させる「罠」でしかないからです。

 かくして、社会を再生産する子育てという「ケア」を担う職員を支えるために、たった今、「競争規制」「共通規則」を確保し維持する組合員の役割は、職場で浮上する。

 それは、育児の最中にない者にとっても、ジェンダー主流化という社会的正義を実現するために行動する権利なのです。