新型コロナ禍で強まる公正な社会への胎動 特集2021年度方針(案)

 6月3日、中央執行委員会は「2021年度運動方針(案)」を提案しました。支部代表者会議を経て、7月15日の中央委員会で決定されると、第75回定期大会の議案になります。今号では、方針案の「私たちをとりまく情勢と運動の基調」から作成した討議資料を届けます。方針(案)は、方針を深め、さらに豊かなものにする討論を職場組合員のみなさんに呼びかけています。

グローバル資本主義の弊害に対抗する世界の運動に合流しよう

 新型コロナ感染症は、変異種の出現もあり収束を見通せる状況に至っていません。既に世界的には338万人が死亡する甚大な被害をもたらしています。パンデミックは、医療・公衆衛生までも市場経済に委ねるグローバル資本主義の弊害を浮き彫りにしています。昨年10月にはローマ教皇が人間の尊厳を中心に据えた社会の構築を呼びかけ、G20の財務省・中央銀行総裁会議でも国際課税ルールが論議され、富の偏在に対する批判と新自由主義の是正を求める動きが世界的に強まっています。

労働に正当な対価を求める国民保健サービス(NHS)の看護師のデモンストレーション。
「闘え、NHS職員の即時賃上げのために」と書かれたプラカードを掲げる大勢の住民が混ざり、「社会主義労働者」を自称している。(ロンドン中心部ウエストミンスター)

深刻化する不平等と国際協調

 IMF(国際通貨基金)は、2020年末までに世界各国が経済対策で総額約1445兆円を支出し状況悪化を阻止できたとする一方、債務の増大が発展途上国に生じさせる負の波及効果や、先進国と発展途上国間の回復速度の格差、国内の所得格差の拡大に警鐘を鳴らしています。

 ILO(国際労働機関)は、2020年には前年比で1億1400万人の雇用が失われ、経済回復が見込まれる21年も6800万人の雇用損失が継続すると分析しています。

 1月に国際NGO「オックスファム」が公表した報告書は、富裕層は富を増加させる一方、貧しい者はいっそう困窮を深める「極端な不平等」が深刻化していることを指摘しています。世界全体で10億ドル以上の資産を保有する富裕層の純資産は、昨年12月までにG20が新型コロナ対策で投じた総額に匹敵する11兆9500億ドルに達しています。

 報告書は、法人税・資産課税が減少する一方、社会保険料や付加価値税(消費税)が増加し、格差拡大の要因になっていると指摘しています。

 WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は、先進国と途上国の格差是正が不可欠との認識を示し、4月時点で高所得国では4人に1人が接種を済ませている一方、貧困国では500人に1人にとどまっている「ワクチン接種をめぐる際立った不公平」が感染急増の原因のひとつと指摘したうえで、「連帯、公平、共有に基づく世界の協調した努力」を呼びかけています。

「自助」を強調する政権の限界

 3度目となる緊急事態宣言発令とまん延防止措置を含む延長・拡大により、日本経済は深刻な事態が続いています。

 総務省の労働力調査では、完全失業者数は前年同月比で12万人増え、188万人と高止まりが続いています。特に、非正規従業員が96万人減少しており、新型コロナ禍の影響が非正規労働者の雇用を直撃していることを示しています。

 一方、昨年10月に財務省が発表した法人企業統計調査では、資本金10億円以上の大企業の内部留保は前年度から10兆円も積み増し、12年連続で最高額を更新し続けて459兆円に達しています。

 ハローワークや労働局による部分的な把握にとどまる厚生労働省の公表でも5月14日時点の新型コロナ感染症に起因する解雇・雇止めは、昨年5月からの累計で10万3593人にのぼり、業種別に見ても小売り、飲食、宿泊など女性非正規労働が多数を占める業種で深刻な影響が継続しています。

 野村総研のリポートでは、約90万人のパート・アルバイト女性の勤務シフトが半分以下に減り、休業手当も支払われない「実質的失業者」になって放置されている実態を指摘しています。「自助」を強調し、新自由主義路線に固執する政権の矛盾と限界を示すものでもあります。

富裕層と巨大資本に課税強化

 米国ではバイデン大統領の就任により、多国籍企業と富裕層優遇の新自由主義路線を強めた前政権の方針転換が開始されています。就任初日には気候変動対策のパリ協定やWHOへの復帰方針を表明し、4月には政権主催で気候変動サミットを開催しています。さらに民主党進歩派の政策を反映した政策綱領にもとづき、連邦政府と契約する事業労働者の最賃を15ドルとし、施政方針演説では、保育や学費の無償化をはじめ中・低所得層に手厚い施策を打ち出す財源として大企業や富裕層への課税強化を明らかにしています。

 英、仏、伊など欧州諸国では独自にデジタル大企業への課税に踏み切っています。

 英国では50年ぶりとなる法人税引き上げに着手し、ボリビアやアルゼンチンなど南米各国でも富裕層への資産課税強化が相次いでいます。

憲法がいきる「ポストコロナ」の新しい社会へ
市民要求実現の共同の運動を構築しよう

感染症対策の混乱と疲弊
生命よりも優先する経済的思惑

 新型コロナ感染症対策は、4月25日に3度目となる緊急事態宣言が発出され、まん延防止措置を含めた延長が続くも、科学的知見を軽視し、十分な補償もないまま「自粛」と「協力」を国民に呼び掛ける無為無策に終始しています。東京オリンピック・パラリンピック開催に固執し続ける姿勢は、国民の生命よりも経済的・政治的思惑を優先するものです。ワクチン接種でも立ち遅れと場当たり的対応を続け、現場の実態を無視して高齢者接種の「7月末完了」を打ち出し、混乱と疲弊を拡大しています。

劣化する政治が行政を私物化
解明されない疑惑

 政治の劣化と政治・行政私物化を象徴する事件が相次いでいます。自民・公明議員の緊急事態宣言下での深夜飲食が明らかになり、首相と自民党幹事長らの多人数での会食も国民の批判を受けました。首相の長男が勤める「東北新社」による総務省幹部への接待、NTTによる接待、農水省、文科省での接待も、政官業の癒着構造を明らかにしました。河井参院議員をめぐる選挙買収事件では、有罪・当選無効が確定しましたが、自民党本部から提供された1億5000万円が買収資金に使われた疑惑は解明されていません。

米国では富裕層を優遇する政治の転換を望んだ労働者がバイデンを選んだ

憲法に合致した生存権や財産権の保障を

 改憲の「第一歩として国民投票改正案の成立を目指す」と首相の表明した国民投票法改正案は、自民・立民幹事長間で合意を交わし、5月6日の衆院憲法審査会で採決が行われ、国民民主党も賛成し可決されました。
 世論調査で「憲法9条は変えない方がよい」61%(朝日)、「改憲論議を急ぐ必要はない」54%(共同通信)など国民世論は改憲を求めていないことは明らかです。生存権や財産権の保障をはじめ現行憲法に合致した政治の実行を求める世論を広げることが重要になっています。

労働者保護の枠外に「多様な働き方」

 政権は財界と一体に新型コロナ禍に乗じて「時間・空間にとらわれない多様で柔軟な働き方」を推進しています。労働者保護の適正なルール確立が重要になっています。4月には、看護師の日雇い派遣を僻地の医療機関や社会福祉施設などを対象に解禁する政令「改正」を強行したことも重大です。

 さらに財界は、「フリーランス」「ギグワーク」といった労働者保護法制の枠外の「多様で柔軟な働き方」の拡大をねらっています。

最低賃金・人勧・定年延長

 最低賃金の引き上げでは、労働組合の運動で非正規労働者の困窮と格差が顕在化するもとで、「全国一律制」要求も自民党議連の結成と理解の広がりなどの変化が生まれています。

 人事院勧告は、長引く緊急事態宣言やまん延防止措置の否定的影響からも勧告は予断を許さない状況にあります。

 公務員の定年延長と抱き合わせの賃金制度改悪や成果主義人事管理の強化を許さない闘いも重要になっています。

削減が狙われるコロナ禍でひっ迫する病床

 公的・公立病院の再編統合をはじめ医療機関の病床削減を加速させる「病床削減推進法案」の成立が狙われています。新型コロナ過で病床がひっ迫しているにも関わらず病床削減を加速するものです。

 「こども庁」設置も子育てや子どもの困難の解決に逆行する施策を続けてきたことへの無反省とともに、「高齢者中心の社会保障の転換」を強調し、社会保障削減に結び付ける意図を示しています。

 新型コロナ対策での財政支出の増加に対して、「財政健全化」を口実に22年度以降も社会保障費自然増削減の継続をはじめ「骨太方針2021」に向けた社会保障費削減論議も開始されています。

地方自治を侵害 「デジタル化」の本質

 5月12日、デジタル関連5法が成立しました。「デジタル化」の本質は、個人情報の集約と企業利益のための活用です。デジタル庁が整備・管理する「ガバメントクラウド」の利活用で、「自治体戦略2040構想」とも結びついた「行政の標準化」を進め、地方自治を侵害すること、個人情報保護法の一元化で先進的な自治体条例を骨抜きにすること、徴税強化や社会保障費削減にマイナンバーを活用するねらいなど重大な危険性を持っています。世界でプライバシー権保護の制度づくりが進められていることにも逆行するものです。

組合要求が地方財政計画に保健師の増員

 1月29日に閣議決定された地方財政計画では、保健所の感染症対応業務に従事する保健師を2021年度から2年間かけて900人増員できるように予算を計上しました。組合が度重なる府省への要請、提言(案)発表、職場の切実な声の発信を続けた成果です。

改定された「特別自治市大綱」

 横浜市がとりまとめた「特別自治市大綱」は3月に改定が行われました。現行の行政区制を前提にした「住民自治の強化」の記述はあるものの「大都市の課題」としては触れられていません。

神奈川県
大量の債券と財調基金を活用

 2021年度予算編成は、コロナから「いのち」と「暮らし」を守り抜くとして、危機的な予算状況の中、県主催イベントや国外派遣の原則中止・延期等の徹底した事業見直し、県債や財政調整基金を活用しました。財政難にあっても県民生活が危機に瀕している中での予算として一定の評価ができます。他方で、県債の大量発行で乗り切るのであれば、来年度も引き続き実施するとされる事業についても不要不急の観点から更に踏み込んだ見直しが必要です。

横浜市
大規模開発事業の正当化が色濃い

 昨年9月に市長が示した「予算編成スタートにあたっての市政運営の基本的考え方」の内容には、「東京2020オリンピック・パラリンピック」、国際園芸博覧会、IR(統合型リゾート)、新たな劇場整備など、引き続き大規模開発事業の正当化が色濃く表れています。これに基づく「施策推進・予算編成・組織運営の重点方針」もビッグイベント等を中心に据えました。2021年度予算は、新型コロナ対策や児童虐待防止、保育・幼児教育の充実などで部分的に市民要求に応えつつも、大規模開発の推進、企業誘致と観光・MICE、各種イベントなどによる「呼び込み型」施策を継続・推進するものとなっています。

 一方、2007年以降市営住宅の建設はなく、公契約条例などの市民要求に対しても本格的な検討を進める姿勢を示していません。

 市民生活に軸足を置いた市政への転換が求められています。

温室ガス削減目標
「世界リーダーシップ」に程遠い

 菅首相は2030年度の温室効果ガス削減目標を「46%」に引き上げることを表明しました。しかし、「パリ協定」の目標達成には世界全体で30年までに「10年比45%削減」し、50年までに実質ゼロにする必要があり、「世界の脱炭素のリーダーシップ」(首相演説)には程遠い水準です。「脱炭素」を口実に原発の新増設に固執し続けていることも重大です。
 福島第1原発事故後の放射能汚染水の処理をめぐっては、海洋放出の決定を強行しました。
 福井県知事による美浜原発3号機、高浜原発1、2号機の再稼働の同意、九州電力の川内原発1、2号機の運転延長の準備の背景は政権が原発の発電比率を30年度までに2割に引き上げるとしていることです。そのために運転期間40年の原則を形骸化させ、40年超運転の常態化をねらうものです。
 一方、日本原電東海第2原発をめぐる裁判では、水戸地裁が運転差し止めを命じる判決を示しました。柏崎刈羽原発では、規制委員会が異例の是正措置命令を出しています。

核兵器禁止条約
NATO諸国でも支持が多数

 核兵器禁止条約が1月22日に発効し、批准国は54か国、署名国は86か国と前進しています。

 NATO(北大西洋条約機構)諸国の世論調査でも核兵器禁止条約への支持が圧倒的多数であり、条約支持の自治体決議の広がりや国民的運動も新たな前進を開始しています。

 条約発効によって核保有国は、国際社会の大きな圧力を受けていくことは必然です。

ホワイトハウスに向かって設置されたポップ「核軍拡に反対。権力を人民へ」

 国民の7割超が日本政府の条約参加を求めており、条約参加を求める地方議会決議も全自治体の3割超の556議会に達しています。

国際協調の障害になる覇権主義の対立

 米バイデン大統領は軍事同盟網の「再強化」を掲げています。とりわけ中国を「最も深刻な競争相手」と定義し、アジア太平洋地域での米軍増強の可能性を示唆しています。一方、中国も南シナ海において軍事施設建設などを進めています。加えて、米国による台湾への武器供与や周辺海域への空母や戦闘機などの展開が軍事的緊張を高めています。

 パレスチナ武装勢力とイスラエルの報復攻撃による紛争の激化など、国際社会の一致した対応が求められる事態に対して、国連安保理が法的拘束力を持つ決議採択に至っていないことも覇権主義的思惑による対立が国際協調の障害になっていることを示しています。

米軍基地の強化に反対する住民の怒り

 バイデン米政権のもとで、米軍は、台湾や南シナ海での有事を想定した新たな作戦構想を打ち出しています。一方で基地強化に反対する住民の運動も続いており、宮古島市長選挙で「市民理解を得ない安全保障はない」と主張する座喜味候補が勝利し、西之表市長選挙でも反対を表明した八坂市長が再選しています。辺野古新基地建設も縄戦犠牲者の遺骨が残る土砂を埋め立てに投入しようとする政府方針に県民の怒りが広がっています。

闘いの課題と運動の基調

憲法改悪の策動を許さず、悪政の暴走を阻止し、国民生活を優先した政治の実現をめざす運動を、新自由主義的「構造改革」路線からの脱却・転換、憲法を守り、活かす日本社会の展望と結びつけながら前進させます。

大企業の内部留保の社会的還元、内需主導の経済再生の社会的世論を広げながら、公務員賃金・労働条件改悪攻撃を押し返し、全ての労働者の賃金引き上げ、労働法制改悪を許さず、安定した雇用と働くルール確立で格差と貧困の拡大に歯止めをかける運動を前進させます。

地方自治破壊の「自治体戦略2040構想」、自治体の「デジタル化」の危険性を明らかにし、市民の安全・安心を守る市政の確立をめざして、民営化路線の転換、市民要求実現を求める市民と共同した運動を前進させます。

「一職場一要求実現」運動をはじめ、組合員の生活と権利を守り、働きがいのある働きやすい職場をつくる要求実現の運動を職場から前進させます。

過半数労働者の組織を共通の目標に組織拡大の前進と職場に労働組合をつくり上げる運動を日常活動として推進します。

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