【第202山】猿島40メートル(神奈川県)数奇な運命を辿った山

【第202山】猿島40メートル(神奈川県)数奇な運命を辿った山

 横須賀市中心部の沖合2㎞足らずに浮かぶ、東京湾最大の自然島、それが猿島である。面積僅か5・1㌶(大桟橋の埠頭部分程度)ながら、首都の玄関口という位置的な重要性から歴史の荒波に翻弄されてきた。

 日蓮上人が猿に導かれたという伝説に始まり、幕末には台場が築かれ大砲が据えられた。明治時代には東京湾に侵入してくる敵艦船を想定して、煉瓦造りの隧道・兵舎・弾薬庫など要塞として整備が進む。昭和になると対艦より防空が重要となり、島上の樹の大半が伐採され高射砲が据えられた。こちらはコンクリート造の台座などとして残されている。

 そして敗戦。1961年まで米国に接収されたが、その間には航路や海水浴場が開かれた。またその特殊な環境から特撮モノのロケ地となり、中でも有名なのが山上の広場に建つコンクリート製の展望台(戦時中に築かれた防空観測所)が、仮面ライダーの敵役:ショッカー軍団の基地として数回登場、そちら方面のマニアには聖地とされている。

自然に回帰しつつある要塞通路

 1993年に航路が停止され、そのまま完全な無人島に戻るのかと思われたが、2年後には横須賀市が管理するようになり航路が復活。その後、一時期取り沙汰された「カジノの島」にならなかったことはつくづく安堵の想いである。21世紀になると秘島ブームに乗り訪問者がV字回復、シーズンの休日など狭い島内は人で満ち溢れる。

 島の見どころは、なんといっても自然と煉瓦遺跡の融合にあるだろう。島全体を覆う鬱蒼とした原生林………が、実は本来の原生林は島周辺の急斜面に残るのみで、大半は戦後に成長した樹だ。前述したように戦時中に山上部は禿山になっていたのだから。また仮面ライダーの当時のスチールを見ると、例の展望塔は大半が青空に映えているが、現在は最上部まで深い樹林が蔽い被さり展望など望むべくもない。半世紀の樹木の成長の証がここにある。

 猿島の最高地点は展望台付近なので、山登頂の証にするならここだろう。周囲の眺めなら桟橋に近い海岸部が良い。横須賀の街並みと三浦半島の山々が手に取るよう。デッキや浜辺で、近過ぎた山:猿島の歴史に思いを馳せてみたい。

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