【第204山】由布岳(大分県)1583メートル 温泉と伝説の美山

 ニッポンの温泉で湧出湯量トップは、ご存知:大分県は別府温泉。そして第2位が別府から山を挟んだ内陸に位置する由布院温泉だ。メジャーで大通俗の別府とは裏腹に、粋でこじんまりしたムードで一線を画す。気骨ある温泉街でもあり、数々のメジャー開発の誘惑をはねのけて今のムードを守ってきた。それで却って、通や女性客を中心に絶大な人気を誇っている。

 そんな由布院の町中のどこからでも、圧倒的な存在感で背景を占めているのが由布岳だ。豊後富士と呼ばれる如く秀麗な裾野を引き、頂点はドーム状の2コブが目を引く。両峰の高さは1mと違わず、これほど揃っているのは奇跡的で、数多の双耳峰の中でも屈指だ。

 町中から存在感が大きい理由は距離の近さにある。町の中心から山頂まで標高差は1000m以上あるのに、距離は僅か3㎞余り。そこそこ知られた山と町の組み合わせの中では最短レコード間違いなし。かような町との密接度ゆえか、山を巡る伝説の多さでも特筆される。中でも有名なのは、由布岳(男山とされる)が、お隣に鎮座する鶴見岳(別府の裏山で、女山)をめぐって、祖母山(名前はウーマンだが実は男山)と争った恋バナだ。結果、由布岳が勝ち、敗れた祖母山は遥か大分県の南端まで身を引いてしまったという。

 山自体は裾野から中腹まで広大な草原で覆われている。上部はミヤマキリシマなどの灌木帯もあり、最上部は荒々しい火山岩が剥き出しになっている。そのため山頂からの展望は抜群で、足元の裾野がそのまま由布院の町に連なっているのが印象深い。

 もちろん九州中部の山々も一望で、南方遥かには自身が追いやった祖母山が。そして東側すぐお隣には勝ち取った鶴見岳が控えているのだが……ごついコブ状の峰の連なりで、男2山に言い寄られた美女ならぬ美山というにはどうにも。むしろ由布岳の方が、山頂こそ彫深きイケメン風だが、優美な裾野をまとっている姿から、男前で気が強いが女子力は高い美山「由布姫」というイメージではないか。ならば男女の役割を逆転させて、今風のお山伝説でも作ったら結構いけるのではと思ってしまうのである。

由布院の町中からの由布岳

◆おすすめコース
 正面登山口─由布岳─西登山口(4時間半:中級向け)
※富士山と同じく「眺めて良い山」でもあるので、登らずとも鑑賞向きの絶好の観光ポイントは多い。
◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図58「阿蘇・九重、由布岳」