深刻化する危機の下 国際連帯と団結の力で 巨大資本とせめぎあう労働者 ダイジェスト2022春闘方針(案)

 1月13日、中央執行委員会は「横浜市従2022年国民春闘方針(案)」を提案しました。春闘方針は、職場討議を踏まえた支部の意見を受けて修正を加えられたのち、2月3日の中央闘争委員会で決定される予定です。方針案の「春闘期の情勢と特徴」と「春闘期の主要な闘争課題と闘いの構え」から作成した討議資料を届けます。

気候危機に直面する世界
ポストコロナへ社会の転換に拍車をかけていこう

 現在、人類は核戦争の危機とともに、環境破壊の危機に直面しています。人間社会の経済活動がもたらす二酸化炭素やメタンなどの増大に伴う地球の平均気温の上昇による気候危機は現実のものと認識され、異常気象の多発は誰の目にも明らかであり、水害は台風以外にも増加しています。大気の96%が二酸化炭素で平均表面温度が470℃に達する金星の研究から、20世紀末の異常気象の多発の原因が地球大気の二酸化炭素の増大との証言により、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が設立され、国際的な研究が始まりました。その成果を踏まえ地球サミットで気候変動枠組条約が採択されました。

2021年8月23日から9月4日までのロンドン市内に標的を定めた一連の非暴力の気候変動抗議行動「Impossible Rebellion」の一幕。写真は8月31日のスタンダードチャータード銀行。赤いペンキを持ち込んだ活動家による、金融資本の「血塗られた手」を可視化する行動は、化石燃料産業への投資の中止を要求する意図を広く知らせるものだ。世論の支持に圧倒された警察官は逮捕に踏み切ることができず、デモンストレーションは公然と続いている。

 また、若者が先頭に立ち、気候変動対策の強化を訴えています。9月24日に欧州など世界80カ国以上で、「気候ストライキ」が行われました。日本では、FFF(未来のための金曜日)japanが呼びかけ、若者や呼応する団体がスタンディングやオンライン会議などにとりくみました。11月6日には、イギリスのCOP26会場周辺をはじめ、ヨーロッパやオーストラリア、韓国など世界各国の300カ所で若者などが集会を開催し、日本でも10都道府県で行われ、気候変動対策の強化を訴えました。COP26の議長国であるイギリスが、石炭火力の廃止などを盛り込んだ声明を発表しましたが、日本や米国、中国、インドは賛同しませんでした。環境NGO「気候行動ネットワーク」は、COP26での岸田首相の演説に対し、温暖化に消極的と2年連続で日本に化石賞を贈りました。

上昇する地球の平均気温
注:各年の平均気温の基準値からの偏差を示す。基準値は1991~2020年の30年平均値。
資料:『2022年国民春闘白書』より(出典元:気象庁「気候変動レポート」)

惨事にもうける富裕層
使い捨てられる非正規雇用

世界と日本の「億万長者」の資産の推移
注:19年以前のリスト公表は、おおむね毎年3~4月ごろ。日本の資産額は、それぞれの時期の為替レートで換算している。
資料:『2022国民春闘白書』より(出典元:米誌「フォーブス」のビリオネア(10億ドル以上の資産保有者)リストにより作成)

 12月7日の厚生労働省・毎月勤労統計調査の10月結果速報では、現金給与総額が前年同月比で8カ月連続となる0・2%増、実質賃金は2カ月連続となる△0・7%となっており、2015年を100とした実質賃金指数は83・2に落ち込んでいます。

 11月30日公表の総務省労働力調査では、正規雇用が17カ月連続増の前年同月比31万人増加となる一方、非正規雇用は3カ月連続減の前年同月比40万人減少しており、新型コロナ禍による影響が雇用の調整弁として非正規雇用労働者を直撃していることが現れています。

雇用形態別雇用者数の対前年同月増減(2017年1月~2021年7月)
資料:『2022国民春闘白書』より(出典元:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」(2021年8月)

 貯蓄なし世帯も調査方法を変えたものの2人以上世帯の16%、単身世帯では36%に達しています。

 一方、9月1日に財務省が発表した法人企業統計調査では、資本金10億円以上の大企業の内部留保は2020年度末で466兆円と前年から7兆円積み増し、過去最高を更新し続けています。

 2012年度と比較すると経常利益1・4倍、内部留保1・4倍、配当金1・9倍に増加する一方、賃金1・04倍、有形固定資産1・1倍にとどまっており、大企業の利益が配当金と内部留保に回っていることが示されています。

 富裕層の富は増えています。2021年の日本の上位50人の資産は合計で約27兆円と昨年より48%も増加しました。富裕層や大企業に対する適正な課税が必要です。

増える女性の自殺
減らされる急性期病床

 新型感染症は、世界的にオミクロン株が急拡大し、日本でも第6波に突入しているといえます。科学的な分析や検証を行わず、公衆衛生を自治体任せにし、自粛と要請を繰り返す政府の対応が事態を悪化させました。「GoToキャンペーン」や「オリンピック・パラリンピック」推進が感染拡大を助長しています。厚生労働省の発表では、コロナ危機が原因の解雇・雇い止めが12万人に迫っています。シフト制で働く非正規労働者なども含めると、実質100万人が職を失ったと推計されています。サービス業を中心に倒産も増えています。

 「自立相談支援機関」への生活困窮者の新規相談件数は2020年に過去最多、前年の3倍の79万件。家庭内暴力や子どもの虐待が増え、同年の働く女性の自殺者は過去5年間の平均値の3割増(約1700人)。事務職や販売店員だけでなく、医療・保健従事者の増加が目立っています。「不登校」とみなされた小中学生も過去最多。小中高校から報告された児童生徒の自殺者数も最多です。

 政府は、感染拡大の真っただ中に、病床を削減すると補助金を交付する「病床削減推進法」を強行し、20年度に感染症対応の中心となる急性期病床など3400床が削減されました。

感染症病床数の推移
資料:『2022国民春闘白書』より(出典元:厚生労働省「医療施設調査」)

「デジタル化」と不適正な利益誘導

 政府は、「コロナに対応できなかったのは、デジタル化ができていなかったから」と、ショックドクトリン的にデジタル化を加速させています。9月1日には、司令塔としてのデジタル庁が設置され、民間から登用された220人の多くは企業との兼業で、秘密保持や兼業先の開示を求める誓約書を1割超が提出していないことが判明しており、企業への利益誘導が懸念されています。

労働権を奪う「雇用によらない働き方」

 労働法の適用外とされる「雇用によらない働き方」が増えつつあります。単発的契約に基づくギグ・ワーカーも含め、請負・委託契約の形式によって労働契約の実態を偽装する働かせ方を防止し、適正に労働者保護をかける取り組みが重要です。

 また、テレワークを活用した「みなし労働制」などに対する労働時間管理の厳格化と使用者責任の強化が求められます。

 1日8時間、週40時間の労働時間制は、命と健康、生活を守る根幹的なルールですが、この原則で働く労働者は4割にとどまり、半数は変形労働時間制で働いています。要件の厳格化や11時間以上のインターバル規制の義務化などの実現に向けた運動が求められています。

全国一律最賃めざす横断的な統一闘争

 最低賃金全国一律1500円を求める運動が世論を動かしています。

 最低賃金引き上げ署名の賛同議員は、党派を超えて110名になっています。中央最低賃金審議会は、2021年度の最低賃金について全国すべての地域で現行制度のもとで最高の上げ幅となる時給を28円引き上げる目安を答申し、地域最賃審議会では、7つの県で中央目安を上回っています。地方議会でも全国一律最賃制を求める意見書採択などがすすんでいます。

 横浜市従業員労働組合も加わる「全労連・国民春闘共闘」は、実質賃金の回復と生計費原則に立って「月額2万5000円以上、時間額150円以上」の賃金引き上げ、「時間額1500円以上」の最低賃金要求を掲げ、春闘におけるベア追求と一体に「全国一律最賃制確立」要求を掲げた最賃闘争を進めることを提起しています。

主要国の最低賃金比較(2018~2021年)
注:①円に換算して表示(2020年末は、1ドル=104.5円、1ユーロ=128.45円、1ポンド=143.82円、1ウォン=0.0972円)。
②アメリカは、29州が連邦最賃を上回る水準を設定しており、一部の州においては最低賃金を引き上げている。
資料:全労連作成

 一方、自治労横浜の加盟する「連合」は、「ベア2%程度、定昇込み4%程度」の要求基準を示したものの、「上げ幅」から「賃金水準」への転換を打ち出した2019春闘から続く個別賃金目標の要求を提起し、大企業産別ではトヨタ労組(巨額の利益を上げながら21春闘でベア要求の目安額を示さなかった)が、今年も前年を踏襲する方向であることが報じられています。春闘による社会的な賃金相場形成を否定し、春闘の個別分散化・統一闘争解体の姿勢を明らかにしています。

ジェンダーギャップの本質は非正規雇用の差別待遇

 世界経済フォーラム(WEF)による「ジェンダーギャップ指数2021」では、日本は世界156カ国中120位でした。特に「経済」で117位、「政治」で147位と順位が低くなっています。

 性別による賃金格差は、非正規の低賃金が要因です。

日本の賃金における男女格差
注:短時間労働者を除く常用労働者の比較
資料:『2022国民春闘白書』より(出典元:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)

 日本型の年功序列型終身雇用制は、男性を仕事に、女性を家庭に縛り付ける一方で安く使おうとして非正規・低賃金労働に押し込んできました。正規と非正規の差別をなくしていくことが求められています。

定年延長へ交渉が本格化

 地方公務員法の一部改正が行われ、2023年4月から定年年齢65歳への段階的引き上げが始まります。各自治体では定年年齢の引き上げに伴う条例改正に向けて交渉が本格化します。賃金水準や役職定年制の導入、60歳前の賃金カーブの「見直し」、退職手当、定年前再任用制の創設など様々な課題が想定されています。希望すれば安心して働き続けられる職場や仕事、公務公共サービスの体制強化を統一的に実現することが求められます。

国際社会が歓迎する核兵器禁止条約

 核兵器禁止条約は、批准国は59か国となり、署名国は86か国に達しています。

 日本政府は、核抑止力論に固執して条約に背を向ける姿勢を取り続けています。全国では622の自治体(全国の自治体の35%)が核兵器禁止条約への調印・署名・参加を求める意見書を採択しました。

核兵器禁止条約の批准を求める意見書の採択状況
核兵器禁止条約への調印(署名)・批准・参加を日本政府に求める意見書決議は上記資料作成時(2021年10月14日)より増え、方針執筆時現在、622自治体議会で採択され、1788自治体の35%となっている(上記資料は昨年10月14日現在、615自治体を表にまとめたもの)。
注:日本原水協調べ

 12月6日に開催された第76回国連総会の本会議では、核兵器禁止条約が今年1月に発効したことを歓迎する決議を128カ国の賛成で採択しました。第1回締約国会議が今年3月に開催されることを確認するとともに、署名・批准していない国に早期加盟を呼び掛けるもので、「核兵器禁止条約」と題する決議の採択は4年連続。国連加盟国のほぼ3分の2にあたる支持を維持しました。締約国会議には核軍事同盟であるNATO加盟国のノルウェーやドイツがオブザーバー参加を表明しています。

米国のための基地建設
米軍にかしずく地位協定

 11月26日に閣議決定された21年度の補正予算案は、軍事費では補正予算案として過去最大の7千738億円を計上しました。防衛省が22年度当初予算案の概算要求に盛り込んだ哨戒機や輸送機、地上配備型迎撃ミサイルなどの武器を前倒しで調達し、補正予算で武器を新規に取得するのは異例のことです。岸田首相は12月6日の所信表明で「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず」と述べています。

 辺野古新基地建設は、岸田政権のもとでも県民世論を無視した強権的姿勢を続ける一方、沖縄県は沖縄防衛局から提出された地盤改良工事などの設計変更申請について、公有水面埋立法が定める「国土利用上適正かつ合理的なること」の要件に適合しないとして不承認を決定しました。軟弱地盤が最も深い地点の調査が実施されていないことや工期が大幅に延び完成の見通しが立たないことから、玉城デニー知事は「埋め立て工事が周辺環境に与える影響は甚大であり、不可逆的であることからすると事実上無意味なものとなる可能性がある、埋め立て工事をこれ以上継続することは許されることではない」と工事の中止を求めました。

 米軍三沢基地所属のF16戦闘機が飛行中にエンジントラブルを起こし、地上に二つの燃料タンクを投棄した事故は、米軍機の危険性と日本の主権を放棄するような日米地位協定の問題点を改めて浮き彫りにしています。

山中市長の公約にいくつもの困難

 9月から始まった第3回市会定例会で山中市長は、カジノ誘致撤回、コロナ対策の強化、3つのゼロ(子ども医療費・出産・敬老パス)、中学校給食全員喫食などの実現を表明しました。10月には中学校給食の全員喫食に向けた実施方法の検討、新型コロナウイルス感染症対策では24時間のワクチン接種の実施や新型コロナウイルス感染症専門病院の開設、大型新劇場構想の撤回、北綱島特別支援学校の4月からの本校復帰など公約を実現しています。

 12月の第4回市会定例会では新型コロナワクチン接種予約体制の改善や年末年始の発熱患者受診体制の確立、ゲノム解析機関の設置などの施策をはじめIRカジノ事業者選定等委員会と新劇場整備検討委員会の廃止や不要になった予算を削減する補正予算の審議が行われ、本会議の採決では自民・公明も含めて賛成多数で可決しました。

 1月31日から開催される第1回市会定例会では2022年度予算案と新たな中期四か年計画(2022年~2025年)の策定が予定されています。市議会の会派構成は少数与党となっていることから、公約の実現に向けた予算の確保や中期計画への公約の反映には様々な困難が想定されます。市民要求の実現に向けて、広範な市民との共同した取り組みの強化が求められています。

市民要求実現の政策を支える住民自治の緩やかな連絡組織

国民的反撃のたたかいを参議院選挙につなぐ

 今年は参議院選挙が行われます。

 10月31日投開票の総選挙では、批判が高まるもとで自民が15議席減らしました。

 野党4党(立・共・れ・社)は、①憲法に基づく政治の回復、②科学的見地に基づく新型コロナウイルス対策の強化、③格差と貧困を是正する、④地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行、⑤ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現、⑥権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する、の6つの柱と20項目の政策で構成される共通政策に合意し、統一候補が東京8区をはじめ62選挙区で勝利し、2017年総選挙での小選挙区の当選数を大幅に増やしました。

 与党が勝利した選挙区でも、野党候補の惜敗率90%以上は33選挙区、80%以上は53選挙区に及びました。

 個人の尊厳や人権、民主主義を対抗軸にした国民的反撃のたたかいが求められています。

主要な闘争課題と闘いの構え(要約)
個人の尊厳を中心に据えた いのち優先の新しい社会へ
労働者・住民の要求を掲げて共同の運動を構築しよう 

1、憲法を守り活かす世論と運動をさらに広げ、国民生活優先の政治の実現をめざす闘い

(1) 国民春闘路線に立って国民的課題・要求を高く掲げながら、「ポストコロナ」の新しい社会へ転換する社会的運動を前進させます。
(2) 核兵器禁止条約への批准を進める運動とともに、米軍基地撤去、核兵器廃絶、原子力空母母港化反対、日米安保条約廃棄の世論を前進させます。

2、賃上げ・雇用安定による内需主導の経済再生を求め、公務員賃金・労働条件の改善、生活擁護と要求実現をめざす闘い

(1) 最低賃金要求「時間額1,500円以上」、賃上げ要求「誰でも月額25,000円以上、時間額150円以上」、自治体内最賃要求「1,500円以上」を掲げ、すべての労働者の賃金引上げ、ベア獲得、最賃引上げをめざします。
(2) 「8時間働けばふつうに暮らせる社会」をめざし、働くルールの確立を求める闘いを進め、官民共同による運動を前進させます。
(3) 会計年度任用職員の賃金・労働条件の改善と雇用を守る闘いを、正規・非正規一体となり前進させます。
(4) 組合員参加での「一職場一要求実現」運動を職場から強めながら要求獲得を粘り強く追求します。

3、憲法と地方自治が息づく働きがいのある市政をめざす闘い

(1) 国の地方自治への介入と、地方自治を変質させる自治体「構造改革」を許さず、国民のいのちと暮らしを守ることができる憲法に基づく地方自治の拡充を求める運動を進めます。
(2) 要求・政策の一致点をもつ市民と政党との共同の運動をさらに前進させ、山中市長の最初の政策となる2022年度予算及び「次期中期計画」の策定に向けて、職場要求と市民要求を反映させる取り組みを、地方自治研究活動と結びつけながら進めます。

4、要求実現のたたかいと結んだ組織の強化・拡大の前進

(1) 全ての支部が必ず「増勢」を勝ち取る構えを確立して、職場に労働組合を確立する取り組みを推進します。
(2) 情勢と運動の方向に対する共通の理解をつくる学習活動を推進するとともに、量質ともに厚い活動家層をつくる努力を強め、青年部活動の一層の前進と次世代育成の取り組みを強めます。
(3) 公務公共一般労組と協力して、関連労働者の要求実現の運動と組織化の取り組みを進めます。
(4) 共済活動を求心力を形成する活動として、組織の強化・拡大と重ねて取り組みます。