日常にあふれるヘイト育てた自治体の施策 朝鮮学校への補助金停止

 2013年2月、黒岩祐治神奈川県知事は県内の朝鮮学校5校に対する補助金(計約6300万円)の予算計上を見送った。知事は「国際社会が強く反対する中、3回目の核実験が強行された。これ以上の継続は県民の理解が得られない」と説明した。2014年度と2015年度は支給対象を学校から保護者へと変更して支出したものの、2016年度以降、朝鮮学校の歴史教科書から「拉致の記述が削除された」ことを問題にして、補助金を打ち切った。

 本市も県の対応を追いかけるように2013年10月、「横浜私立外国人学校補助金交付要綱」を改定した。第1条にはもとより、「国際交流の増進及び私学教育の振興を図る」とある。補助の対象を明記した第2条に新たな項目を加え、「国際情勢を鑑み、補助金を交付することが前条第1項に規定する趣旨に反すると市長が認めた外国人学校にあっては、補助の対象としない」と。

 朝鮮学校のみを排除したい当時の林文子市長率いる当局の思惑が透けて見えるこの条項を平然と使い、本市は2014年度予算ですでに計上していた補助金約270万円を執行しなかった。

 他方、同年の予算案には新市庁舎の整備検討費用9700万円を計上している。旧市庁舎は2009年に約60億円かけて耐震補強工事を終えたばかりだった。たこ足を解消して市民の利便を高める必要はあったにせよ、庁舎には「調査検討」だけで約一億円の予算がつく。一方で校舎には目もくれない。老朽化が進む朝鮮学校を蔑みをもって見下すような態度。これが現在まで長らく本市が続けてきたやり方だ。

 2014年度の本市一般会計予算は約1兆4182億円。このうちの270万円は、およそ年収500万円世帯にとってのわずか10円と同規模だ。

 自治体による補助金の打ち切りは、悪意ある差別に〝お墨付き〟を与えた。排外政策が今日の陰湿さを増した悪質な差別の根を育て、増長させている。補助金打ち切りに込められた悪意にそそのかされた人間は、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムをためらわない。

 この日、自転車に乗った通行人が「うるせえ」と怒鳴り声で吐き捨てて行った。大人たちが囲んでいたスピーカーから数メートル離れた朝鮮学校の生徒たちの目の前を通る瞬間に、だ。マイクを握っていた日本人の支援者がたじろいだほどの距離だったが、その日本人に向けてではない。

 心配して生徒たちに目をやると、誰ひとり動揺する様子をみせず、凛とした表情で県庁を見つめていた。すさむ日本社会で生き暮らしていくことに慣れなければならないかれらの日常を象徴するかのような光景に、言葉を失った。

 日々の業務に追われる中で立ち止まって考えることは容易でない。が、首長の指示、上司が降ろす仕事、自らの立ち位置と方向性が憲法の誓約する日本の民主化に合致しているか。その問いと向き合い続けることが地域に暮らす人々の負託に応える基礎になるのではないか。職員個人で乗り越えられない課題だとすれば、突破する力は、自治体労働運動をおいて、庁内には他にないだろう。