【第238山】大仏ハイキングコース(神奈川県)地質の違いを足の裏で知る

 鎌倉を取り囲む山々の西側に大仏ハイキングコースがある。ここを歩いた人は多いだろう。この人気コースを、ちょっと異なる視点から見直してみたい。

 浄智寺の脇から入山。ほどなく深い森の登り道になるが、足元に注意を。コースの大半は赤土に覆われているが、所々に基盤岩が露出している。これが実に滑りやすい。泥岩という、流れ溜まった泥が堆積した岩で、質感はツルツル。ところがしばらく歩いていると、ザラッとした感じの岩質に変化している。これは凝灰岩といい、主に火山灰が固結したものでコンクリートのよう、こちらは濡れていても苔などが生えていない限り安心して踏める。三浦・鎌倉一帯は地層構成が複雑で、泥岩層と凝灰岩層が細かく入り組んでいる。源氏山を抜けるとまた泥岩に戻り、以後続く。足の裏で地質の違いを実感できるのは、ハイカーならでは。

 コースのやや南寄り、脇にそれる道に看板あり。「カフェテラス樹ガーデン」に至る。山上の森の中に、瀟洒な煉瓦造りのカフェコーナーが連なり、登山道からダイレクトに入れる「天空のカフェ」として人気があったが、営業許可の関係で今は閉店を余儀なくされている。入るだけでも感銘を覚える名所なので、営業スタイルを変えるなどして是非とも復活して欲しいものだ。

 コースのラスト、大半の人は鎌倉大仏側に下るが、下りきる直前、右手に「大仏切通」への道が分かれている。実は、数ある鎌倉の切通の中で、神聖度MAX。核心部は左右から岩壁がのしかかり、鬱蒼とした樹林の中、強い霊感に打たれるだろう。さらにその先に分岐があり、大きく開けた空間にそびえたつ岩壁に、方形に穿たれた「やぐら(中世の墓所)」の横穴群が圧倒的だ。

大仏切り通しにて

 連続する異空間を抜けると、どんでん返しのように街中に飛び出す。この変化の妙と落差は鎌倉ハイクの真骨頂でもある。通りに出たらバスに乗るのも良し、歩くならトンネルを抜ければ大仏はすぐそばだ。

◆おすすめコース
北鎌倉駅─浄智寺─源氏山─大仏切通─鎌倉大仏 (2時間:初級向け)
※雨降り後はしばらく道全体がぐちゃぐちゃになるので、軽登山靴が向く。
◆参考地図・ガイド◎「大仏ハイキングコース 地図」でネット検索を