「戦う覚悟」発言を糾弾し、戦わない決意を表明する

 台湾を訪問した麻生太郎自民党副総裁は8月8日、「日本・台湾・アメリカをはじめとした有志の国々に強い抑止力というものを機能させる覚悟が求められている。こんな時代はないのではないか、戦う覚悟です」、「いざとなったら使う。台湾の防衛のために、台湾海峡の安定のために、それを使う。明確な意思を相手に伝えて、それが抑止力になる」等と講演しました。
 この主張は、対中国を念頭に置いた専守防衛を逸脱する戦争の挑発であり、断じて容認することができません。

 また、発言をめぐっては、同行した鈴木馨祐自民党政調副会長が翌9日夜、BSフジの番組で「当然、政府内部を含め調整をした結果だ」とも述べています。
 政権与党の要人としての発言であるだけでなく、仮に政府としての確認を経て発言したものであるならば、国家的な公式の立場の表明と受け取れる点でも極めて重大です。
 そもそも、台湾は中国の不可分の一部という原則は、国際的に承認された法理です。日本政府もこれまで、日中共同声明(1972年)、日中平和友好条約(1978年)、平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(1998年)、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(2008年)の日中関係の重要な政治文書において確認してきたことです。日中平和友好条約締結 45 周年の節目にある今年、政府がするべきことは基本原則の尊重です。外交による友好的な両国関係の発展にこそ努力するべきです。
 仮に「台湾有事」なるものがあったとしても、中国の内政問題であり他国が干渉を許される問題ではありません。ことさらに「中国の脅威」を騒ぎ立て、ともすれば武力行使までして台湾独立をそそのかすことは、正当な民主主義擁護の活動には当たりません。
 日本の政府は近ごろ、「自由で開かれた国際秩序」や「規則に基づいた国際秩序」を力説しています。国際秩序を言うなら、国連憲章が明確に示す、あらゆる国家の領土の一体性の尊重及び国境変更のためのあらゆる武力の行使の禁止をこそ守らねばならず、麻生氏の発言は、これにも違反するものです。

 先の侵略戦争で日本の帝国主義・軍国主義は、地域の安定と繁栄を脅かし、国境を跨いで大勢の労働者の命を奪いました。日本政府の「戦争する国づくり」は、かつて実現できなかったアジア圏における覇権を、米国との軍事同盟を後ろ盾にして、形を変えて達成しようとしているとの疑念を周辺国に抱かせ、厳しい警戒の目を向けさせています。

 国内国外のすべての働く仲間たちと協力して日本の完全独立と世界の恒久平和実現のためにたたかうことを綱領上の任務とする横浜市従業員労働組合は、強欲な自らの権益と引換えに労働者の殺し合いを画策する麻生氏の「戦う覚悟」発言を糾弾するものです。
 あわせて、昨年末の「安保3文書」に基づく敵基地攻撃能力の配備と日米軍事同盟強化などの戦争の準備にあらためて反対し、その横浜市域における具体化である「横浜ノース・ドック」への揚陸艇部隊配備の撤回を求めて、自治体労働者が再び侵略戦争の遂行業務は担わない決意で共同と連帯行動に取り組むことを表明するものです。

2023年8月15日
横浜市従業員労働組合中央執行委員会