関東大震災時の虐殺から100年 真相の隠ぺいを돌파(トルパ=突破)して史実と向き合いたい

関東大震災時の朝鮮人虐殺から100年を目前に、8月21日、各地から学生たちが参加して都内で「朝日大学生一大行動」に取り組み、学びと連帯を深めました。新宿駅からスタートしたデモ行進ののち、都庁前ではマイクをリレーする抗議行動、その後シンポジウムを行いました。この行動は、在日朝鮮人大学生と日本人大学生が共同する「トルパ(朝鮮語で「突破」の意味)プロジェクト」のメイン企画。今なお続く日本の植民地主義に抗い、虐殺の歴史を記憶・継承し、朝鮮人差別がはびこる現状を「突破」することを目的に、これまで京都大学で学習会、名古屋市立大学で大学内展示、大阪公立大学で映画上映会など、全国各地の大学で取り組みを成功させています。10月以降は同志社大学、大阪公立大学、関西学院大学でシンポジウムや特別講演会が予定されています。

シンポジウム「関東大震災100年 朝鮮人虐殺の歴史を記憶し、朝鮮人差別に反対する朝・日大学生集会」には約170人の学生が参加した。
なぜ今、朝鮮人虐殺を語るのか。ディスカッションする学生ら。(参加者の安全を確保するため写真には加工を施しています)

 「朝鮮人や中国人が殺害される、いたましいできごとも起こりました」
 横浜市教育委員会による中学生向け副読本には、関東大震災における朝鮮人虐殺に関する記述があります。

「朝鮮人が井戸に毒を投げた」のデマ

 1923年9月1日11時58分に関東地方を襲ったマグニチュード7・9の巨大地震は、現在の震度7や6強に相当する強い揺れでもって、昼時に煮炊きをしていた調理場から相次いで火災も発生させました。

 「朝鮮人と社会主義者が井戸に毒を投げ入れた」、「朝鮮人が放火している」。発災のあと、混乱の中でどこからともなく流言が飛び交ってきました。

 遅くとも翌2日には東京、神奈川など関東一円で市民組織の自警団らが、朝鮮人の虐殺を始めます。殺された朝鮮人は約6000人。中国人や朝鮮人と間違われた日本の地方出身者の被害も明らかになっています。

 加害を過少に見積もりたい者は数百人と主張しており、数には大きな幅があるものの、虐殺が紛うことなき事実だったことは、公文書にも記載されており、歴史研究によって確定しています。

内務省「朝鮮人は不逞」と電信

 1923年9月3日付で内務省警保局が地方長官に宛てた電信(現在は防衛省防衛研究所戦史研究センター史料室が保管)には、「朝鮮人ハ各地ニ放火シ、不逞ノ目的ヲ遂行セントシ、現ニ東京市内ニオイテ爆弾ヲ所持シ、石油ヲ注ギテ放火スルモノアリ」と記した上で「厳密ナル取リ締マリヲ加エラレタシ」とあり、自警団だけではなく「官」にも責任があることです。

 一橋大学大学院2年生で、シンポジウムに登壇した大行動実行委員の日本人女性は、歴史の確定は、嘘と事実を並列に置く「思想」や「政治」ではなく、科学によるべきだと指摘。都庁前では「虐殺の被害者や目撃者は、一生ぬぐえないおぞましい記憶と闘いながら、攻撃されることが分かっていながら、なぜ敢えて証言を続けるのでしょうか」とスピーチし、何があったのか学ぶ必要があると語っていました

植民地主義者は他民族を「劣っている」とみなす差別を必要とする
若者は事実を伝えられておらず、歴史の歪曲に加担させられている
日本の大学に通う朝・日大学生声明文

1923年9月1日、関東地方に甚大な被害をもたらした関東大震災が起こりました。
しかしその時起こったことは災害だけではありませんでした。
戒厳令が発布され、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人が放火した」などの流言ひ語が飛び交い、日本政府や軍隊、警察や自警団、一般市民が6000名以上もの朝鮮人たちが虐殺されました。

関東大震災時の朝鮮人虐殺は日本の植民地支配下で培われた「不退鮮人」観、「暴徒せん滅論」に基づき起った官民一体のジェノサイドでした。
しかし100年経った今、虐殺の本質はわい曲・矮小化されています。
2017年には小池百合子東京都知事が関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文送付を拒否し、天災により亡くなったすべての人を追悼するという旨の発言をしています。
また、教科書からも「虐殺」という文言は書き換えられ、100年前の9月に起こったことは天災による被害、あるいはその混乱のために起こった殺害であったという社会的な認識が強まっています。
このように日本社会において虐殺の事実を認めない「虐殺否定論」や史実のわい曲、矮小化が唱えられ真相は隠ぺいされ続けてきました。
真相の隠ぺいによって、虐殺された朝鮮人とその遺族は100年に渡り幾度となく殺され続け、その尊厳は未だ回復されないままです。

同時に日本の植民地主義と朝鮮人差別は今なお続いています。
高校「無償化」制度からの朝鮮学校生徒除外や補助金の削減、朝鮮大学校学生への緊急就学支援金給付除外など直接的な朝鮮学校差別・弾圧、また、在日朝鮮人に対するヘイトスピーチやヘイトクライムが蔓延る社会で朝鮮人が朝鮮人と言えない社会が作られています。
このような日本社会において私たち朝・日大学生は、過去から現在にわたり起こっている民族差別と植民地主義の克服のために共に行動し、日本政府の公式謝罪と真相究明を求めていきます。

100年を節目に私たちが共に分厚い障壁に新たな風穴を開け、現状を突破していく行動を主体的に行っていきます。そして、虐殺された朝鮮人と遺族の尊厳の回復を求めること、100年以上続く日本の植民地主義とそれに伴う朝鮮人差別に抗っていくことを表明します。