【第243山】渡島駒ケ岳1131メートル(北海道)
規制と自己責任の境界は?

 函館近郊、渡島半島の一角に位置することから付いたネーミングで、蝦夷駒ケ岳との別称もある。雄大な裾野を引く火山で、鋭く天を衝く剣ヶ峰がいななく馬の頭、ゆったり横たわる砂原岳が鞍を思わせ(写真)、駒ケ岳の名にふさわしい。大沼を前面にした秀麗で分かりやすい姿は、北海道を代表する景観の一つだ。

山麓から見る渡島駒ケ岳

 元は1700mを超える富士山型の高峰であったが、江戸寛永年間(1640年)の大噴火で一挙に崩落、600m近くも背丈が縮んでしまった。だが、そのお陰で現在のような、他にはない個性あるスタイルになったのだし、岩屑なだれが川をせき止め大沼などの湖沼群を生み出したのだから、美景は災厄のたまものであると認識させられる。その後も昭和戦前まで何度も大爆発を繰り返し、火山国ニッポンの中でも荒ぶる火山として名を馳せてきた。その後は平穏になったが平成になって小規模な火山活動を繰り返したため、登山禁止となってしまう。

 現在は平穏だが、登山は6~10月の9~15時、コースは一本のみで標高900m地点までと規制されている。が、法的拘束力(罰則)はなく、自主規制に任されている観がある。現地には監視員もおらず時間前からどんどん登っていく。山の傾斜は緩いが、登山道は真っすぐに近い一本道なので、それなりにきついし単調そのもの。それでも前方に剣ヶ峰の鋭鋒が見え、振り返れば湖沼群が光り、背後には津軽海峡や下北半島が見えてくる。

 終点は標高902mの火口原で、ロープが張られ「一般の方、ご遠慮を」なる控えめな看板が立つ。一帯は、噴煙はおろか硫黄の臭いも皆無なので、全く平穏としか思えない。正面には登高欲をそそられるピークがズラリ。目の前に鰹節を並べられたネコよろしく、規制ラインを踏み越えたくなるのがハイカーの人情。事実、多数の登山者の半数くらいはロープを越えていく。一体どこまで行くのだろう。箱根の神山の登山規制とは別次元の状況だ。

 規制を設ける行政は言うべきことだけは言っておく、ハイカーは自己責任で登っていく。現代社会の抱える責任の境界線問題が、こんな所にも垣間見えているのである。

◆おすすめコース
登山口─馬ノ背(往復2時間:初級向け)
※やはり、規制は守るに越したことはありません。

◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図2「ニセコ・羊蹄山」