【第246山】樽前山1041メートル(北海道)ホット&デコレーションケーキ

 北海道有数の観光地である支笏湖畔には、幾つかの個性的な火山が鎮座している。中でも見た目がユニークなのが樽前山だ。大きな山体(外輪山)に小さな山体(溶岩ドーム)が乗っかっている。ホットケーキに四角く切ったバターが載せてあるような構図なのである。似たようなタイプの山は他にもあるが、スタイルのすっきり度と完成度の高さからすればナンバーワンに間違いない。

 まずは外輪山の緩い斜面をひたすら登る。外周尾根の一角に登り着くと、不意に衝撃的な大パノラマが開ける。広大な火口原の中央に、ドーンと巨大な溶岩ドームが鎮座、それがもくもくと白煙を噴き上げているのである。ドームが出現したのは明治時代、出来立てで外観通りのホットな山。遠目には角切りバターに見えたのが、垂直に切り立った周辺部がケーキの土台、上辺のシルエットは具が盛り沢山で、まるでデコレーションケーキのよう。インパクトは強烈だ。

支笏湖畔から見るホットケーキ

 樽前山の最高地点は溶岩ドーム上にあるが、常時噴煙の上がる危険度の高い山であり、残念ながら近づくことはできない。それで後は外輪山を一周することになる。時計回りにたどっていくと尾根の切れ間があり、水が流れた跡が谷状になっている箇所がある。まさに川の始まりが見られるのだが、惜しむらくはこの谷がなければ、火口原に水が溜まって湖になっていたのではないかということだ。役者の揃った、絵になる原地形だから、ここに水景が加われば天下一品の絶景になっていたに違いない。

 外輪山の中では西山がいい。溶岩ドームからちょっと距離を置いた分、見た目の収まりがよくなるし、その先に支笏湖のブルー、そして背後には太平洋が果て無く広がり、実は海岸近い山なのだと認識できる。さらに反対側まで進むと、ドームがざっくり縦に切れたところがあって、まさにケーキをナイフで切り下げた跡のよう。やがて外輪山の最高地点である東山に着く。ここで初めて「樽前山」の大看板が立つ。

ほどなく一周が終了。4時間に及ぶコースのほぼ全域が展望のハイライト、これほどウォークパフォーマンスの高い贅沢な山も珍しい。侮り難し、北海道。

◆おすすめコース
7合目登山口─外輪山一周─登山口(4時間:初級向け)
※東山までの往復だけなら1時間半で済む。
◆参考地図・ガイド ◎「樽前山 登山地図」で検索を