2020年7月3日(金曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第175山】ピラミッドピーク 1,853m(北海道)「くっきり鮮やか三角錐」

日本三百名山随一の難峰と目されるのが、日高山脈のヘソにそびえるカムイエクウチカウシ山、通称カムエクである。

 とにかくお気楽には登れない。避難小屋を含め宿泊設備は皆無でテント必須。のっけから長い林道歩きの果てに、延々と河原歩き。何度かは股下まで水に浸かって対岸に渡渉しなければならず、当然ながら増水時は通行不可。ましてや登った後で増水すると下山できなくなってしまう。

 川を離れると沢沿いのヤブ漕ぎが続く。時期が早ければ沢筋に詰まる雪渓を、崩落の危険に怯えながら潜ったり越えたり。苦労の果てに視界が開ければ、コース中のハイライト、八ノ沢カールに至る。氷河地形の名残である鍋底状の平地や斜面に、水が流れ、花が咲き乱れ、正に山上の別天地。カール地形なら南北アルプスにも多いが、原始度ならここがナンバーワン。手付かずの大自然の只中だ。唯一の人工物が、カール中央の大岩にはめ込まれた遭難碑のプレートである。

 時に1970年、福岡大ワンゲル部羆襲撃事件は登山史上に名高い。5人パーティーがカムエクの周辺で執拗にヒグマに追いかけられ、3名が犠牲となった痛ましい事件である。これ以前は熊対策のバイブルといったものは確定しておらず、この事件の教訓が、熊を避けるための行動指針としてマニュアル化された意義は大きい。逃げる時は背中を見せるな、一旦熊の触れた荷物は回収するな、など。昨今も例年ニュースを賑わす熊事件だが、実は登山者が襲われた例は極めて少ないので、対策に忠実なら過度の心配はご無用。カールから先は展望を楽しみつつ山頂を目指すのみ、山頂の絶景は前号紹介の通りだ。

 さてこの界隈には、いまひとつ目を引かずにはいられない注目スポットがある。カムエクとカール越しに対峙する山で、まるで人工であるかの様にきちんとした三角錐。ずばり「ピラミッドピーク」の俗名で知られ、日本中探してもこれほど完璧な三角錐の山はないだろう。当然、斜度は45度に近くカムエク以上に急峻だが、山頂からはまた別の絶景が待つ。こんな豪勢な+αがあるのも、カムエク登山の醍醐味といえよう。

◆おすすめコース
 八ノ沢カール─ピラミッドピーク(往復2時間:上級向け)
※3日行程になるが、八ノ沢カール連泊がベスト。

グリーンの完璧三角錐

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図3「大雪山」

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