【第228山】御池山1906メートル(長野県)日本唯一の隕石クレーター

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 宇宙から飛んできた小惑星(隕石)が、地球に衝突して地面がボール状に凹んだ窪み、それが隕石クレーターだ。単に円形の窪地なら各所で見られるが、クレーターと認定されたものは少なく、世界中で百数十か所を数えるのみである。

 ニッポンにもその候補はいくつかあるのだが、世界クラスで学術的に認定されたものはひとつしか存在しない。それが長野県の南端にある御池山クレーターである。山奥に位置し樹林で覆われているためクレーターと気づかれにくく、調査が始まったのが30年ほど前のこと。隕石そのものが見つかれば確実なのだが、世界的にもその例は少ない。衝突直前の衝撃波によって周辺の岩石が変性したり傷が残ったりした証拠が確認されて、2012年にようやく隕石クレーターと公認されたのである。直径45mほどの小惑星が2~3万年前に衝突したものと推定され、クレーターの直径は900mほどだが、起伏の激しい山中にできたため、浸食が激しく原型の半分ほどが失われている。

 遥か山奥に位置する御池山だが、クレーターを横切る車道が通じていて簡単に登ることができる。クレーター外縁に当たる、尾根上の山道を歩く。最高地点が御池山で、樹林が切れ笹原が広がり、明るく広やかな展望が得られる。正面には南アルプス南部の巨峰が惜しみなくその雄姿を連ね、西側には笹・美林・前衛山地の背後の恵那山が絵のように鮮やか。

 もうひとつ見逃せないのが山頂近くの窪みにできた池だ。クレーターとは関係なく地滑りでできたもの。中郷御池と呼ばれ、原生林やカラマツ林の連なる底地に静謐な水を湛えている。ぐるり一周することができ、歩むごとに変化する水と森のコンビの景色は見飽きることがない。

展望ピークから見たクレーター相当部分

 最後は道路沿いの高みにある展望ピークに上がり、クレーターの全体像を眺めると良いが、前述したように「いかにもクレーター」と言った形状では見えない。それこそ心眼で、風景の中にクレーターの形を描く必要がある。ともあれこれで、全コースをクリア。要所要所で美景が揃い、なによりクレーターという付加価値が、ここでの山歩きを充実したものにしてくれよう。

◆おすすめコース
登山口─御池山─中郷御池─丘の上展望台─登山口(2時間:初級向け)
※是非とも、事前にクレーターについて学習しておきたい。
◆参考地図・ガイド◎「御池山隕石クレーター」で検索して「遠山郷観光協会」のホームページから必要な情報を