【第254山】三浦半島南岸歩き(神奈川県)「岬めぐり」を歩いて堪能

 京急線の三浦海岸駅から三崎東岡行きのバスに乗る。実はこのバスは、昭和フォークの名曲「岬めぐり」のモデルとなった路線として知られている。前半は歌詞の通り湾岸を巡り、後半は台地上の畑風景を進み、三崎に近い宮川町で下車。

 ここからすぐに徒歩での岬めぐりがスタートするが、のっけから岩の造形に驚かされる。地層が激しく傾き、崖をじっと見つめていると平衡感覚がおかしくなってしまいそう。かと思えば、場違いに広やかな岩盤が現れる。そこにも地層の彫刻が荒々しく刻まれ、波濤がそのまま固結して岩になってしまったような造形美に圧倒される。この一帯は大正時代までは海の底だったのが、関東大震災で2mほど隆起したお陰で歩けるようになったもの。先の能登半島地震で半島北岸が4mも隆起したが、同じメカニズムの地質の痕跡を、三浦半島南岸一帯にも見出すことができるのである。海を覗けば白波が怪奇な岩々を噛み、「岬めぐり」の歌詞通り「砕ける波の激しさ」に息をのむ。

70度も傾いた地層の岩峰

 ハイライトの1時間を歩き終え、いったん漁港と海岸道路に出る。再び湾岸に出ると浜も現れ、先刻よりは穏やかな海岸風景に癒される。台地上の畑に出たのち、道路脇に広大な干潟が広がる。潮の満ち引きで、一面の水風景が短時間で陸化する変幻の妙。さらに歩き、剱崎灯台の下部を回り込むと、小さな美しい浜が幾つか現れる。さざ波が貝殻いっぱいの浜に優しく打ち寄せる様は、先刻の激しい岩風景とは対照的。人がいなければ正にプライベートビーチを満喫できるだろう。

 通常コースは松輪バス停で終了となるが、時間と体力に余裕があればもうひと歩き、広大な金田湾沿いの浜辺を延々と歩くとよい。緊張の前半とは打って変わって、のんびりと足を前に出すのみ。この落差が心地よいし、正面に三浦半島の山々、右手に東京湾と房総半島を眺めながらの風景も爽快そのもの。終点の三浦海岸にたどり着けば、バスでの「岬めぐり」全線を、歩きで達成できたことに言い知れぬ満足感が得られるだろう。

◆おすすめコース
 宮川町バス停─江奈─剣崎─松輪バス停─金田湾─三浦海岸駅(4時間半 初級向け)
※海辺は意外に危険。波浪の高い時、風の強い時は決行しないこと。干潮時がおすすめ。
◆参考地図・ガイド ◎「三浦・岩礁のみち」でネット検索して神奈川県ホームページへ