2019年6月1日(土曜日)[ 登りたいのは山々 ]

【第153山】羅臼岳1,661m(北海道・知床半島)「遥かなる島を眺めて」

ニッポンの半島で、山が最も高いのが知床半島である(紀伊半島は別格として)。殆どが火山から成っていて、中央部には1500~1600mクラスの山が連なる。殊に網走方面の海岸線から眺めると、連嶺が海に浮かんでいるかのようで壮観だ。

知床連山の最高峰が羅臼岳である。半島なので双方の海岸から登山道があるが、一般的なのは西側の岩尾別温泉から登るルートだ。標高差が大きく長大で、ひたすら高度を稼いでいくしかない。半島の尾根上に当たる羅臼平で一息つく。正面には目指す羅臼岳が、一面のハイマツの海に浮かぶ孤島のように見えて格好いい。羅臼岳全体は成層火山なのだが、山頂部だけ溶岩ドームを構成し、急俊な岩峰となって我々の前に立ちはだかる。

手も使いつつ喘ぎながらようやく山頂に達する。展望の素晴らしさは折り紙付きだ。まず両端が海なのが新鮮な眺め。半島の山で双方の海の展望が広がる山など、ありそうでいてあまりない。三浦半島の大楠山はその一例だが、ここはスケールが違う。そして何より、東側の海には北方領土:国後島が浮かんでいるのである。個性ある山々が延々と連なっていて、その長さに驚く。何せ100㎞以上あるのだ。

さらに、そこそこ空気が澄んでいたら、島の遥か前方に目を凝らしていただきたい。国後島の北端にそびえる爺爺岳(チャチャヌプリ)を見つけることができる。富士山の上にプチ富士山を重ね乗せたようなスタイルだから、見分けはつくだろう。北方4島の最高峰であり、標高1772mは今いる羅臼岳よりも高い。ニッポン固有の領土でありながら登りたくとも登れない山。遥かに霞むシルエットをじっと見つめていると目頭が熱くなってしまうのである。

ところで知床一円の山では、山中に全くトイレがないどころか、一切の用足しが禁止されている。往復10時間を我慢するか、携帯トイレ持参で、2か所にある簡易小屋で用を足して登山口まで持って降りる必要がある。小用については自然へのインパクトは少ないという説もあるが、現地の厳正なルールだ。この山らしさと割り切って、土産話にでもする外はないだろう。

◆おすすめコース
岩尾別温泉-羅臼岳往復(9時間:中級向け)※クマが多いので、人が多く登る時分に行動したい。鈴は必携。

1540-1

羅臼平から見る、ハイマツの海に浮かぶ羅臼岳(上の画像をクリックすると大きく表示します)

◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図1「利尻・羅臼」

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