【第185山】 大無間山 2,329メートル(静岡県) 巨大極まる南アの秘峰

 南アルプスの南端とされているのが光(てかり)岳だが、稜線をさらに南下していくと、なんとも大きな山が蟠踞(ばんきょ)している。山麓から稜線上まで2000m近い高低差を誇り、150㎡に及ぶ広大な土台が急角度で立ち上がる一方、稜線上は比較的平らで、大きく見ると台形状をなしている。中央の主峰から三方に尾根が伸びるが、何れも高度を大きく下げないため、別峰というより主峰と一体のように感じられるのである。結果、山全体が大きくまとまった巨大な塊に見える。一塊の山としては日本アルプスでも文句なしのナンバーワンだ。単なる「山」ではなく、大無間山塊と呼んだ方がしっくりくる。

 名前もなにやら仰々しいというか、おどろおどろしい響きがある。稜線のスカイラインが眉間のように見えるだからとする説(みけん→むけん、と変化)や、無間地獄から来ているとの説明もある。いずれにせよ「大無間」の名は、スケールが途方もなく大きなこの山には相応しい。

 ひたすら地味な山でもある。正規の登山道はないが、地図を読む力があればどうにか踏み跡を辿って行かれる。どこから取り付いても、シルエットそのままの急峻極まる登りが、果たして終わりがあるのか?というくらいに続く。台形の上に乗ってしまえばほっとするが、これまでの労力に見合うようなご褒美=開放感ある稜線歩きなどはない。シラビソなどの原生林が、これまた果ての無いかの如くに続く。無間というより無限の山なのである。

 ようやく登り着いた山頂からは、台形の上辺をなす三つの尾根が分かれる。それぞれの先端に個性ある突起があり、内ふたつは小無間山、朝日岳と称するが、印象深いのは真南に位置する風不入だろう。読みは漢文調に「かぜいらず」。最近のガイドでは「風いらず」と記しているが、漢字3文字の方が印象深い。山頂を密林が覆い、風が侵入してこないことからのネーミングだが、名がズバリ山頂の状態を表している点が実にユニーク。こんな秀逸な命名法は全国的にも稀だ。ただでさえ登山者の少ない大無間山塊だが、ここのピークを踏む人はさらに限られる。秘境中の秘境が存するのである。

◆おすすめコース
 寸又峡温泉─大無間山(往復16時間:上級向け)
※風不入経由で下山すると、さらに時間・体力・地図読み力を要求される。

「西側から見る大無間山(左寄り)と風不入(右端)」上の写真をクリックすると別のタブで大きく表示します。

◎昭文社:山と高原地図43「塩見・赤石・聖岳」