【188山】八方池2,086メートル(長野県)奇跡の倍増し3分間

【188山】八方池2,086メートル(長野県)奇跡の倍増し3分間

 八方尾根といえばウィンタースポーツのメッカ。夏場でも運航するゴンドラやリフトを乗り継げば、そこはもう雲上の別天地だ。尾根上の一帯は樹林が少ないので、標高の割には高山的な風貌を帯びる。草の斜面には花が咲き乱れ、湿原もあって木道の散策が楽しい。眼下の斜面の先は白馬平の平野部が広がり、下界の街並みや田畑のパッチワークを見る気分はまた格別だ。そして極めつけが、尾根上の一角を占める八方池である。

 狭い尾根の絶頂部に池ができてしまう不思議。更に不思議が重なることがある。池にくっきりと写る白馬三山だ。数多の人はこの絶景を求めてやってくる。が、山の神は容易に期待に応えてはくれない。山上はガスが湧きやすく、三山はもちろん池一帯が霧や雲に閉ざされる確率は高い。また眺めがすっきりしていても、吹きさらしの高山ゆえに池上は波立ちやすく、水面の映像は乱れてしまう。

 が、時には写真の様な奇跡も訪れる。この日は夜明け前から無風、池面は静穏であったが、山は濃霧に覆われていた。やがて急速に霧が晴れ、上下対象の白馬三山が姿を現す。静謐にしてインスタ映えしそうな世界。しかしほどなく微風が吹き、池面は乱れ鏡状態は終了。この間僅か3分ほど。「奇跡の3分間」限定の倍増し鏡風景であった。

 写真を見て「外国の山みたい!」と評してくれた人がいた。たしかにヨーロッパアルプスによくある氷河地形的な景観といえる。周辺に樹木がなく、尾根がそのまま背景に抜けているせいもあろう。が、よく見て欲しい。池の縁にしっかりと石祠が立っている。美的な池は格好の尊崇の対象だ。ここもまたニッポンならではの景観なのである。

 ただ近年、こうした山上での静かな時間が少なくなったという声を聞く。風が立ちガスが湧きやすい。これが気候変動の産物なのかどうか、きちんと見守っていく必要があるだろう。今日の様な山の絶景が楽しめるのも、気候が平穏であってこそなのだから。

◆おすすめコース 八方池山荘─八方池(往復)(2時間弱:初級向け)※奇跡が起こりやすいのは早朝か夕方。リフト終点の山小屋に泊まるとよい。

◆参考地図・ガイド 「八方尾根自然研究路ガイド」でネット検索して地図をダウンロード

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