【第227山】安達太良山1700メートル(福島県)三山と温泉と

【第227山】安達太良山1700メートル(福島県)三山と温泉と

 「あれが阿多多羅山、あの光るのが阿武隈川。」高村光太郎『智恵子抄』の有名な一節、教科書等でご存知の方も多いだろう。福島県の中心部、高村智恵子の生家のある二本松の西側に聳え立つのが安達太良山だ。火山だが単独の独立峰ではなく、複数のピークが南北に並び、特に中央部の三山はそれぞれに格別な個性があって、バラエティー豊かな山歩きが堪能できる。本峰だけでもOKだが、山慣れた人なら是非三山を。

 安達太良山本峰は、別称である「乳首」そのままの溶岩ドームの山頂を持つ。さえぎるものがないから、一点から360度の大パノラマ、平野部と背後の阿武隈山地、そして東北南部の山々が果てしなく視界に飛び込んでくる。また、ゴンドラが高所まで通じているので、シーズンには山道も山頂もハイカーや元気な観光客でごった返す。

 そのすぐ北に、本峰より10mほど高い鉄山がそびえる。より険しい岩の峰だが、月世界を思わせるような荒涼とした沼ノ平の火口風景に度肝を抜かれる。見た目同様の凄惨なエリアで、中を通過する登山道があったが有毒ガスで多くの犠牲者を出しているため、今では閉鎖されている。もちろん山頂からなら安全に、壮絶極まる景観を楽しめる。

沼ノ平の火口。後方左端が安達太良山本峰


 さらに北、連峰の最高峰が箕輪山だ。これまでの2山とは打って変わって緑に覆われた穏やかなピークで、来訪者は稀。眺めもがらりと変わり、山姿を反映してゆったりした斜面が四方に広がる。気持ちを穏やかにさせてくれる、癒しのピークといえよう。

 そして安達太良登山で外せないのが、くろがね小屋だ。中腹の沢筋にある温泉小屋で、山麓の岳温泉の源泉に当たるので湯量が豊富。秘湯を売りにした温泉は多いが、これこそ山奥の、文字通りの秘湯といえよう。周囲は開けた明るい谷間で、鉄山の岩壁など安達太良の山岳風景が一望でき、紅葉シーズンには壮絶な装いとなる。山に登らずとも温泉往復だけでも来る価値は十分だ。また、木造の小屋のがっしりした造りと、開放的で大胆な内部の間取りは特筆もの。見た目とは裏腹に痛みが進み、近年中に建て替え予定と聞くから、訪れるならお早めに。

◆おすすめコース
ゴンドラ終点─安達太良山─箕輪山─くろがね小屋─ゴンドラ起点(7時間:中級向け)
※くろがね小屋往復だけなら4時間ほど、運動靴も可。
◆参考地図・ガイド◎昭文社:山と高原地図11「磐梯・吾妻・安達太良」

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